ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

聖地の河原にて

 

       
 沢に来ています。いえ、河原にお供物を置くにしても、前回のだけではちょっと貧相に思えたもので。

 


 沢を歩くと目にするのがこれ。何だかわかりますか。あまり上等でないメノウ(玉髄)が集められてます。先にこの沢でメノウ拾いをした方の放棄物です。これを
「もうここのええもんはオレが先に頂いたぜひっひっひ」と取るか
「私が不要のものです。こんなものですいませんがよろしければどうぞ」
と取るかでこちらの品位が問われます。私も同じようなことしているのでああやられたなくらいで看過してます。駆け引きなのよね。ちなみに同じことして私が込めるメッセージは「ぐははざまあ」いや違った「お先に失礼しました」です。品位品位。

 


 ここら辺なら信徒の皆さまに喜んでもらえるかな。…… 念のため申し上げますが、沢歩きを勧めているわけではありません。滑落、転倒、落水、岩角や枯れ枝での受傷(特に目)、毒虫、毒蛇。沢は危険がいっぱいです。間違ってもお子様連れで入ってはいけません。私が沢のメノウを河原に持っていくのも、そこらへんが理由でしょうか。

 


 ほんのりと漂う甘い香り。ビワの花が咲いてます。茨城では寒さゆえあまり元気のない果樹ですが、へえ今ごろ咲いてるんだ。静かな山里に香る南国の夢。

 


 やって来ました久慈川メノウ教聖地の河原。いまだにソレ言うか、とかツッコまれそうですがいいんですボクの自己満足で。今日もそれぞれに楽しむ方々が。テントでひとり野営予定の中年男性、それぞれの車で乗り付けた若い男性3人は流行りのスタイルをキメるのが目的のようで、奥には四駆で中洲に乗り込んで子どもを遊ばせる男性。いずれも私がお声をかける対象ではありません。さあメノウをばらまくぞ。

 


 前の記事でお見せしたここらの小粒は

 


 まとめて石積みに隠しました。メノウ教信徒なら気づいてくれるでしょう。

 


 草しかなかった河原にいつの間にかヤナギが根を下ろしていました。すでに何回かの洪水に耐えてます。こいつの根元にも大き目の玉髄を一個。他のメノウも、車に踏まれるのを避けて枯れ草の間に置かせていただきました。縁あれば。運あれば。

 


 ちなみに上流側にあるこれ、以前の記事の珪化木じゃありません。まだ「木」ですよー


 最近YouTubeにメノウ拾いの動画をよく見かけます。その中にはこの河原を具体的に紹介しているのもあって、責任を感じることしきりです。それがこの置きメノウという不毛な行動の理由。久慈川動画は例外なく来た!見た!採れた!という内容ですけど、現場をご存じの方は「?」ですよね。そんな簡単なもんじゃない。動画はもちろん編集、ときに演出だってあるはず。そもそもの元凶は私です。だからせめて、そういう動画を見ておいでになった方が落胆してお帰りになるのは避けたいと思うのです。この偽善者め。

 

 この聖地で、休日のご家族連れにはお声をかけたりします。グレーのエスクードに気づいたら怖がらないでね。今日も久慈川に皆さまの笑顔があらんことを。

 

 


追記 わらしべイベントに協力してくださっている信徒の方々への感謝も、もちろん忘れてはいません。どうぞ遠慮なく 久慈川メノウ教大神官 と名乗ってください、うふふ。

 

 

 

 

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久慈川メノウの肖像 聖地の河原に行く前に

 

 ひねりも何もありません、超ド直球タイトル通り。聖地へのお供物をしばらく怠っていたので手許のものをまず記録してから、と思い立ったわけです。里子に出す前の記念撮影なんて言ったら悲しいかな。なるべくきれいに撮ってやったので、楽しんで見ていただければ幸いです。

 


 ここ1か月ほどの拾いもの。赤いの少ないなと思ってよく考えたら、玉川に行ってませんでした。メノウそのものより探索することに興味が移ってきています。

 


 これは那珂川の支流・緒川の玉髄。記事にしましたっけね。

 


 ちゃんと蛍光する。

 


 晶洞もあり、クリーニングしたら艶もきれいでした。聖地の河原で誰かを待ってます。

 


 はいこれ。前回の記事で神さまからの賜わりものとしたぶつぶつ玉髄でございます。仏頭状構造の上を微結晶が覆っています。これは光るぞと申しましたが

 


 やっぱり光った。

 


 部分を拡大しても良い景色です。

 


 でもやっぱりぶつぶつが好き。ごめんなさい、神さまからの頂き物でもあるし、やっぱり手放せません。このビンボー人が。

 


 こちらは同日に別の沢で拾ったもの。選んだ基準は「蛍光しそうなやつ」。


 ね。それでは各個に

 


 コレは一見するとただの石英のひとかけら。でもこの透明感のある乳白色は蛋白石オパールの特徴です。

 


 ほら。最近は見た瞬間にこういうのがわかるようになって…… あああまた一銭にもならないスキルが身に付いてるうう。

 


 お次のこちら、この手の純白仏頭状はもう定番。

 光ってもああやっぱりね、なんて感想になってしまう。いかんもっと感動しなくては。

 


 爆炎の如きぶつぶつ。ぶつぶつぶつぶつぶつああたまらん。 ← 変態

 


 これはメノウの晶洞を囲む構造のひとかけらと思われます。オパール部分と玉髄部分の発色の違いがよくわかります。

 


 好きですこういうの

 


 次のも晶洞の一部。仏頭とその基部が見えてます。

 


 遥か昔、北海道・大雪山の強風吹きすさぶ岩稜で見た空がこんなでした。

 


 蛍光シリーズの最後にこれをお見せします。酸化鉄の沈着が何だか痛々しいひとかけら。

 


 鉄分が蛍光を遮ります。でもこれの真骨頂はひっくり返した裏側でした。

 


 うぎゃあ、何とも荒涼たる景色です。仏頭状構造の上を微結晶が覆い、酸化鉄が赤茶色に被ってさらに先端が削れる。よくもまあこれだけの試練に耐えたもんだ。結果としてこの玉髄は、唯一無二の光を手に入れました。透過光を当てると

 


              わああ。

 


 こんなの初めて見た。予測もつきませんでした。すいませんこれも手許に残せてください。

 


 最後は定番モノで皆さまのご機嫌をお伺いいたしましょう。いずれも「久慈川で拾った玉川系メノウ」の分類です。

 


 やっぱり久慈川メノウはこうでなくちゃ。これでも信徒の皆さまの分を取らぬよう、場所選びには気を遣った結果です。

 


 蛍光はさまざま。個性あふれる久慈川メノウです。赤いのはやっぱり光らなくて、それが最近玉川から足が遠のいてる原因だったりする。すっかり蛍光好きになってしまいました。

 


 いちばん赤くて大きいの。

 


 蛍光はないけど透過光にするときれいです。

 


 ただこの表面の模様、成因が想像つきません。本当に多様です。

 


 同じく赤いの。

 


 メノウらしい縞模様が見えます。

 


 蛍光を強く発したやつ。

 


 玉川独特の「型押し」メノウ。他鉱物の結晶形が形に残っています。

 


 さあいかがだったでしょうか肖像写真。ビンボー人根性からやっぱり手放せないメノウが出てしまってすいません。代わりに再度拾いに行って量だけは確保、聖地の河原に置いてきました。そこらの話はまた次回にお話しいたします。

 

 

 

 

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めぐるダンジョンの日々

 

 フィールドという名のダンジョンめぐる日々の、ここ一週間ほどの記録です。


第一のダンジョン 氷雪の森

 


 福島県境を目指していたら、林道がアイスバーンになり車を捨てました。北国の人にはどうってことないでしょうけどこちとら雪に不慣れ、無理はしない。

 


 こんなとこにもカヤラン。けっこう寒いとこにもあるもんだ。結局これ以上のものを見ずに終わった雪の中。色彩のない世界を私は不得意にしています。

 


第二のダンジョン 忘れじの谷

 


 コシダの群落が迎える谷の入り口。「コ」シダと言いつつ小さくありません。この場合シダとは無限成長する「ウラジロ」のことで、それより小さいのでコシダ。南方系の美しく逞しい植物で、ハワイでは山火事や噴火の跡地を埋め尽くすんだって。

 


 鉄のゲートで閉じられて、車の心配をしなくていい林道を進みます。ここは何十年も昔に歩いた記憶があります。植林地の中を行く何の芸もない谷ですが、なぜか印象深く、いつか再訪したかった。こうして時間が自由になり、心の余裕ができたことを有難く思います。…… 今年もいい条件で再任用の話が来ましたがお断りしました。もう働きたくないでござる。

 


 わあ、岩一面にスミレモ。気生の緑藻ですけど、こんな自然の場所に群生するのは珍しい。普通は山中の忘れ去られたような祠の石垣に付いています。

 


 変なもんあった。血管模様が気色悪いというか面白いというか。どうやらジャケツイバラの豆ざやの外皮が剥がれたもののようです。この季節ならではの見ものかな。

 


 とりあえずヤンマタケ探索大義名分にしているので沢に降りてみます。冬眠から覚めたサワガニを驚かせてしまった…… のはパンニングで毎度のことだけど、写真をよく見たら背に二つも大穴が開いてました。脚も一本足りない。タヌキとかカワセミとか敵だらけの中で生きている、その厳しさよ。

 


 ここは険しいV字谷が続くのですが、傾斜が緩やかでかつて沼だった場所があって、そこが土砂で埋まっていました。それがいま見慣れぬ、妙に立ち姿の立派な木の林になってます。1本1本にタグが付けらていることから植林されたものと知れます。こんな場所にはて何だろう。

 

 

 落ちた葉と樹皮で正体が知れました、これハルニレだあ。うわあ感動。ニレ科の落葉高木で、九州まで分布しますが北方系。北海道ではエルムの名であちこちに有名な並木道がありますね。茨城では希少で、県内数えるほどしか自生地がありません。それをわざわざ誰が何の目的で植えたのか。想像するだけで楽しくなります。

 


 なんて今のこの谷を味わいつつ4キロほど遡上、沼にたどり着きます。かつては林道の終点からさらにけもの道を歩いてほとりに立ちました。斧を投げ込んだら女神さまがぬっと出てきそうな神秘の湖面でした。今はすぐ隣を新たな林道が通り、周囲の森は伐採されています。ああやはり無事では済まなかったか。

 

      
 それではと今日は林道を越え、峠に向かう山道を行ってみました。初めての領域です。するとぽかりと、巨樹の茂る森に出ました。おおお。我が聖なるツクツク森にどことなく似ています。これ、こういう森を探していたんです。ダンジョンの宝箱にたどり着いた気分です。これで夏に再訪して冬虫夏草があったなら今日のこのクエストは大成功ということになります。なんか調子出てきたぞ。

 


第三のダンジョン 忘却の里

 


 次なるダンジョンは奥久慈男体山に続く火山角礫岩の大岩塊。以前にも記事にした、廃村になりつつある山上の集落です。

 


 水戸ではまだ朝に氷点下なれど、陽射しの暖かなことったら。ダンコウバイがこの山上の春告げ花です。

 

  
 この細い道の奥、さらに山道を登ったところにおばあさんがひとりで住んでいるらしい。何と言うか、凄絶ですらあります。

 


 かつてご先祖が田んぼを作っていた谷地に、今はヤマアカガエルが育ちます。

 


 谷に入ります。

 


 やっぱりヤンマタケはないけれど、コケの緑が生気を放ちます。常緑で冬から変わらないはずなのに、色合いも光も全然別ものに見える。生命の気としか表現できません。

 


 ここの主役はトラノオゴケ。盛んに胞子を放出しています。

 


 胞子のうを拡大すると…… おおこれぞダンジョンの魔物。接写って楽しいなあ。

 


 ウチワゴケがあったので細胞一個まで写してやれ。

 


 同じ岩の上にワスレグサの芽吹き。この姿ではワスレグサ類としか言えませんがさて何だろう。ヤブカンゾウノカンゾウユウスゲ、もしくはゼンテイカニッコウキスゲ)。ぜんぶ可能性があるので、夏に咲く花を見ないとね。

 


 わあいキクラゲ、タマキクラゲという種類。春の雑木林でよく出会います。

 


 大好き赤い実ヤブコウジ

 


 青いのは ヤブラン  ジャノヒゲの種子          

 


 タチツボスミレ

 


 スミレの季節が始まるのだなあ。スミレ好きのこの私、フジスミレのためだけに日光まで行ったし、おととしはオオバキスミレを目標に新潟まで遠征したっけ。またスミレのために旅に出ようか。好きなものがあるって人生を外向きにしてくれます。


 下を見て草花を追い、上を見てヤンマタケを探す。忙しく立ちまわる私でしたが

 


 わああ仏頭状玉髄。沢の砂地にちょこんと乗るように。

 


 長辺12.5 センチの立派なものです。これ絶対に蛍光するぞ。自分の足跡しかない沢の中であまりにもあからさまな置かれ方。久慈川の神さまからご褒美をいただいた。そう考えることにします。

 


 ここでメノウというのは想定外でしたが、あって不思議ではありません。そういう眼であたりを見回してさらに何個か見つけましたが、まあ持ち帰るほどでは。ちなみにこの層状に石英が貫入したメノウ、掘り出してひっくり返したら

 


 一面仏頭状構造でした。ブラックライト当てたいけど、懐中で持ち帰るにはちと大きすぎた。

 


 沢を出たら午の刻を過ぎてました。久しぶり、お湯を沸かして

 


 ふっふっふ。セイコーマートブランドのカップそば。セコマはそれだけで記事にしたいなあ。

 


 うまかった。でも量がちと足りない。小食な私ですが結局帰りの道の駅で弁当買ってしまいました。

 


 展望台に黒ずくめでガラの悪いおっさんひとり。

 


 ふもとの山里は陽光と春風に満ちて。ここもいつか、長い時の試練の果てに忘れ去られる日が来るのでしょうか。

 

 

 

 

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王国の春は接写から

 


 散歩の路上に今年の初スミレを見ました。コスミレかな。しまった春が足を早めている。わが王国はどうなってる。…… というわけでマクロレンズ引っ提げて庭に出ました。さあ接写大会の始まりです。気色いい写真ばっかりだから覚悟してね。

 


 祖父が丹精し父が台無しにした盆栽の鉢に地衣が繁殖していました。藻類を共生させた菌類、ボクの大好きな異形の生命です。これはヒメジョウゴゴケ

 


 同じ盆栽の残骸上にイワヒバが生き残って繁茂してます。紅葉した葉を拡大すると鳥の足みたいです。

 


 庭の一角「三角地帯」を、今年はユキノシタの丸い葉が埋めつつあります。生物の研修に使える紫の濃いやつ。それ用にと頂いた一株がよく増えてくれました。もう私が使うことはないのだけど。

 


 ゼニゴケの親戚ジンガサゴケ。メスの植物体が繁殖の準備を始めてます。春はコケにも恋の季節です。

 


 庭に転がしてあるメノウを、シャレのつもりで超接写してみたら地衣が芽生えていました。画面中央に緑っぽい点点が横に並んでるのわかりますか。溶岩が冷えたあと最初に定着する生物。かつて火星にもあるんじゃないかと言われたことがありましたっけ。

 


 我が王国の春の彩りクサボケが、今年もつぼみを膨らませています。

 


 拡大したら先っちょをかじられてた。

 


 近年すっかり定着してしまったルビーロウカイガラムシは、いくら駆除しても必ず目こぼしがあって復活してきやがります。ウメモドキを弱らせていたのを冬の初めに徹底して取り除いたつもりが、ちゃんと引っ付いているもんなあ。以前ロウソクにした記事を書きました。(デーモン閣下の声で)お前もロウソクにしてやろうか

 


 コケというのもまあ色々ですが、都会にも普通のあるのがこれギンゴケ。ブロック塀の下の方に銀色の丸っこい群落を作ります。接写したら葉の付け根に無性芽をいっぱい付けて増える気満々なのが見て取れます。こんなものも春を待っていたんですねえ。

 


 さてこれは。そーです着生植物クモラン。茨城では希少。先日の大風のあと、スギの枝に付いたのがおびただしく落ちていて、その様子があまりに不憫で何本か枝ごと連れ帰ってしまいました。いつも言ってますが落ちたものは長くは生きられません。わかってはいたのに。

 


 その中の一株がなんと胞子、じゃなかった種子を飛ばし始めました。ああこんな場所で。

 


 裂開まえの果実。全長4ミリ。コケの胞子のうと何が違うというのだろう。中の種子も哀れなほどに極小で、自活できるような養分を持っていません。ランの種子は共生菌から養分をもらうことで初めて発芽できるという、これまた多様な自然に頼りきった生き物なんです。

 


 ぱーんと弾けて。この糸みたいのは弾糸ってやつ? コケやシダにある、胞子を弾き飛ばすやつ。こんなとこもコケなみです。でもコケや地衣みたいな逞しさはありません。我が王国に定着することはないんだろうなあ。哀しいなあ。

 


 これもどうなるんだろう。ニッコウキスゲことゼンテイカ。水戸の産地はいつ誰かの気まぐれで開発されてしまうかわかりません。さすればこの気品ある美しい花も絶えるでしょう。せめて遺伝子は残さねばといただいてきた種子は20個。発芽したのは5個で、生き残ったのはこれ一株。情けないほどに発芽率の悪い種子、哀れなほど生命力に欠けた植物体。そりゃ滅びるわなあ。

 


 ほわんと漂う芳香で、ジンチョウゲが開花していることに気が付きました。こんなまっとうな庭木があることを忘れていた。王国の春のはじまりです。

 

 

 

 

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聖なる森とヤンマタケ

 

 ヤンマタケを求めて森を巡る冒険を続けています。でも本当に探しているものは何だろう。

 


 1月末の空振りに終わった沢歩き。ぽかりと空間が開け、肌にしっとりと来る、妙に「気」の良い一角に出ました。

 


 ここはコケの緑が特に鮮やかで、しばし撮影に夢中になりました。

 


 去り際、振り向いたらこれがあった。結界だったのかも知れません。

 


 古代ローマの政治家・哲学者キケロは、大木の茂った森の中へ入ると人は神の存在を知る、と言ったそうです。また聞きです、キケロなんか読んだことありません。ただ妙に日本人の自然観に符合すると思いませんか。聖なる森、という概念です。そこに立つだけで神霊の気と交歓できる森、奇跡が現れる聖なる場所です。沖縄の「御嶽」がそうでしょう。私が記事にする御岩神社やツクツク森もそう。いずれも原生の自然が保たれた、多様な生態系が残された森です。そこは冬虫夏草のみならず、あらゆる生命の息づく土地であるはず。たぶん私は、そんな奇跡の場所を探しているんです。

 

 


 さて本日。例によって地図で当たりを付けた沢にやって参りました。今日こそはヤンマタケを見てやるぞ。毎回言ってるけど。

 


 いい空気感の沢です。でも周囲はスギの人工林、残念ながら多様性に乏しく、我が聖なる森ではないようです。でもとにかく探してみよう。

 


 ヤンマタケのような空中の器物に着生(気生)する冬虫夏草の存在条件は湿度が高いこと。このコケの生え具合を見る限り、場所選びは間違ってません。

 


 コケたちが胞子を飛ばす季節が始まってます。歓喜の声が聞こえるような。

 


 常緑の葉にカビゴケ。これも高湿度の証拠。

 


 もひとつ、このカヤランのような着生ランも目安になります。たくさん落ちてました。

 


 冬緑性のオオハナワラビの「花」がすっかりスガれて。冬のものたちの退場です。

 


 同類のアカハナワラビ。県のレッドデータで「情報不足」の分類です。

 

   
 なんて感じで歩き、時にやぶを這いまわったりしますがやっぱりヤンマタケは見つかりません。今日も駄目かなあなんて、もうすっかり負けグセが付いてしまいました。思えば昨秋あたりからヤンマタケを意識していくつのフィールドを巡ったことか。…… 探し始めて2時間、ああ腹減ったなんて気が萎え始めたころ

 


                  あ。

 


  あったああ。ようやく見つけましたヤンマタケです。宿主は赤トンボ類のノシメトンボ

 


 沢沿いのアオキの実生が茂る低木林、水辺から8メートル、地面からの高さは2メートルほど。ようやく新産地を見つけました。

 


 状態はいい。でも成熟はしてません。さあこれが悩みどころ。現地に置かないと追熟はできません。ぜひこれを見せたい昆虫少年と次に会うのは一か月以上先、ここで様子を見る余裕はあります。でもこれ、枯れ枝に着生してます。いつ落下するかわからない。ならばすぐ採集すべき。次に来たときに、なんて期待や計算が裏切られた経験は山とあります。でも追熟もさせたく…… ぐぐぐぐぐ。散々に逡巡し、道を行きつ戻りつ悩みましたが結局現場に残すことにしました。

 


 それにしても、この一個体を見るまでにずいぶん苦労しました。ヤンマタケが減ったように感じます。理由も思い当たります。ヤンマタケの過半はノシメトンボなど赤トンボ類が宿主なのですが、その赤トンボが激減しているんです。あの稲穂の空を覆いつくすようにトンボが群飛していた当たり前の日本の情景が過去のものになりつつあります。県によってはノシメトンボアキアカネをレッドデータに登録する動きもあるくらいです。赤トンボは水田でヤゴが育ちます。その水田で近年使われるようになった薬剤が、ヤゴに致命的に作用するのだと。「効率化」の名の元、また一つ日本から大きなものが奪われつつあります。限界に達した資本主義によるコモンの破壊、なんて言うのかな。その末端でヤンマタケの衰退が始まっています。

 

 


 なんか愚痴のようなまとめになりました。ようやく行き着いたヤンマタケの産地。でもなぜでしょう達成感はなく、ここじゃない感がぬぐえません。その理由が冒頭に並べたごたくになります。つまり私はヤンマタケにかこつけて「自分の」聖なる森を探していたと、そういうことなんです。

 

 

 

 

 

↓ 昨年の記事。

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デカいが好きで何が悪い

 


 日本最大の埴輪型建造物、どーん

 


 ここは水戸市西部、くれふしの里古墳公園でございます。牛伏古墳群といって、計16基の円墳やら前方後円墳やらが丘のそちこちに造営されてます。

 


 前方後円墳の一つは円筒埴輪まで復元されて

 


 周囲は美しい杉林

 


 そして巨大埴輪「はに丸タワー」。背後に階段があっててっぺんは展望台です

 


 それなりの眺望

 

       
 先日、TV番組でここが紹介されてました。まあ、芸人とゲストが地域の見どころや名店を巡るという百番煎じくらいのお手軽な深夜番組でしたが、その中でMCのロバート秋山が埴輪の巨大さに感嘆の声を上げ、他に人がいないことを嘆いて、水戸の皆さん地元にいい場所ありますよ、なんて言ってくれてました。確かに、市民にあまり知られてません、日本一なのに。そういえば昨年写真を撮るだけ撮ってご紹介していなかったなあ、ということで今回の記事になりました。

 


 で、思ったわけです。そうかこういうのでいいんだ。

 


 石岡にある日本一の獅子頭                石岡市HPより

 


 一乗院の毘沙門天

 


 牛久大仏。日本どころか世界一

 


 月に一度「かめはめ波」を撃ちます

 


 ボルゴグラード「母なる祖国」像

 

   
 デカけりゃいいってもんじゃない。そう言いますけど、やっぱりデカいはすごいんです

 

   
 誰もがあんぐりと口を開けて、うわーとか意味のない言葉を吐いて、あとはただ沈黙するしかないデカさ。それはまさにすごい芸術に出会った時の私たちの反応そのものです。デカければそれだけで芸術になる、この単純にして圧倒的な真理。デカいは無敵。デカいは正義。

 

 そんな単純な「真理」を肯定するのもまた一興だと思いませんか?

 


 なんか他のデカいものも見たくなりました。水戸芸術館の収蔵品で、空気で膨らます全長50メートルのバッタがあります。今月末に展張・公開そして修復が行われるそうです。見に行こうかと思います。

 

 

 

 

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春待つ野の記

 

 水戸です。梅まつりに合わせて駅前広場に梅の大鉢が並べられましたが

 


 正直言って観光ポスターが貼られた程度の感覚でした。季節の移ろいを意識したのは

 


 サンシュユ

 


 アセビが図書館前でほころんでいるのを見た時です。

 


 相変わらずフィールドを歩き回っています。先日は永らく空白だった那珂川の支流・緒川を歩いて

 


 いくつか玉髄を手にしました。以前「百観音」のさいに、玉川と同じあたりが源流なのにメノウがなかった、と愚痴った川です。

 


 メノウと紛らわしいチャートが多い川でもあります。

 


 この時はむしろ珪化木の見事なのが嬉しかった。

 


 この不思議な色の石、たぶん火山岩でしょうけど、磨いたら綺麗だろうなあ。

 


 ヤンマタケ探し、けっこう本気になってますが見つかりません。生物観察会でなついてくれた昆虫少年に見せてあげたいのですが。

 


 ガヤドリタケはあるんだけどなあ。

 


 御岩神社での植物調査に付き合わせてもらいました。この時もさりげなくヤンマタケを探してたのはないしょね。

 


 スギ花粉が黄色い霧のように立ち込めるまであまり日はありません。焦る気持ちがかえって暦を進ませるのは分かっているんですけど。

 


 毎年ザゼンソウの確認に行く湿地。葉芽ばかりで今年も開花はないようです。周辺を随分探してみましたが、やっぱりここにしか生えてません。生物の分布って本当に不思議で、同じような環境は広く周囲に広がっていても、ザゼンソウがあるのはせいぜいバレーコート一面分の面積です。本当にギリギリで生き残ってる感が。

 


 これも同じ場所で毎年お見せするキチジョウソウ。こいつに至っては生息域がほんの畳2畳ぶん。ちなみにザゼンソウは北、キチジョウソウは南の植物で、共に撤退する一族から取り残されて、なんで同じ場所で歯を食いしばってるんだか。

 


 これも毎年お見せするホトケノザ。どこにでもある。いつの間にか咲いている。元気だねえ。その元気、ちと分けてやってくれ。

 


 さてヤンマタケ。ここになければ本当にないぞ、という川の上流部。先に言っちゃうけど、ここでも見つけられませんでした。でもいろんなものを見た。


 ぱちん、からんと乾いた音が森のそちこちから響きます。枯れ枝が落ちるにしては妙に規則的かつ頻繁で、はて何がといぶかるうちにそれが目の前に落ちてきました。

 


 フジのさやが弾けて

 


 種子が飛び落ちる音でした。花が咲いたのは前年の春。実が弾けるのが今ごろとは知りませんでした。寒い中フィールドに出たからこそ知り得たこと。例年ならもっと家に籠っていたでしょう。ヤンマタケ探索の途、とうとうなしえなかったけど決して無駄ではなかったと思いたい。

 


 ニリンソウ! もうこんなに萌芽してました。

 


 カタクリも。いつもなら開花してからその存在に気づくものです。

 


 フキノトウもこんなに開いて。そういえば数日前の晩のおかずに天ぷらで出たっけ。

 


 わあ、キクザキイチゲの花芽がこんなに膨らんでいた。

 


 個人的にはニワトコの芽吹きが春の先駆けと思えます。むかし親しんだものです。

 


 コケ界の人気者、タマゴケ。このコロコロした胞子のうが可愛いですねえ。コケも恋の季節で、これが3月になると成熟してフタの部分が茶色に染まり目玉みたいになります。私は今の姿が好きです。

 


 じつは1月末、ウグイスカグラのフライング気味な開花を見ていました。フィールドの一番花はそういえば、いつもこのウグイスカグラかキクザキイチゲです。今年も順調に季節は巡っています。花の季節はもうすぐ。さて次は何を見ようかな。

 

 

 

 

 

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