ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

茨城県北芸術祭5 最終回 大子からガルパン聖地を経て袋田の滝へ

 

 

常陸大子 


 いよいよ県北芸術祭事後レポート最終回,大子篇に到達しました。読み方「だいご」ですよ。どうでもいいですか。今回も長いですよー。すごく長いですよー。


F-01  8days in daigo、Kindecoプロジェクト、ほか
F-02  8days in daigo、Kindecoプロジェクト、ほか

F-17  8days in daigo、Kindecoプロジェクト、ほか


 公式HPではこういう扱いになってます。いきなりよくわかりません。どこからどこまでが010217なのかわかりません。どうしてこういうことになってしまったのか。東京芸大の学生さんとかの作品群らしく,思わずおお,と声を上げるような作品はなかったなあ。むしろいかにも学生,しょせん学生という感じの,期待して見る分には情けなくなるような作品が多かったような。気になったものだけ写真をあげます。


① 奥久慈茶の里公園

 当初のパンフレットではF-01だった会場です。工芸作品を並べた展覧会。

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② 旧初原小学校

 同じくF-02。各地でこの芸術祭の会場になった「廃校」の一つです。ただここ大子町は古い木造校舎を大事に使ってきていて,廃校になってもその建物の保存に力を入れています。おかげで多くの映画やドラマの撮影に引っ張りだことか。なんかうれしいですね。

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 小学校に向かう途中にあった,これも作品というか芸術活動。みんなでこのわらを少しずつ切り取っていくんだって。 

…… いい加減にしてくんないかな,このテの「芸術活動」。

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大子町市街地

 町の商店や街路を飾ったり神社の階段を利用したりしたものはこのイベントの意味をよく汲んでいたと思います。

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百段階段」と言うそうな。

 

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 旧銀行っぽい建物が再利用されて…… いない。ここも会場のはずなのですが,立派な「街かど美術館」の看板があるのですが,芸術祭会期中も会期後も,開いているのを一度も見たことがありません。何をやっているんだ。本当に何をやっているんだ。

 

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 この市街地の展示で,一番衝撃を受けたのがこれ。いえ,作品にではありません。会場になったこのお宅です。かつて「高級ブティック おしゃれの店ロンシャン」として営業なさっていたようです。作品から数メートルの位置のお店のバックヤードだった場所のドアが半開きになっていて,この店のオーナーであったと思しき女性がコタツに入っておられました。それだけでもう,この町の辿った歴史とかこのお店の盛衰とかこの女性の人生とかがうかがい知れてしまって,得も言われぬ感慨に襲われてしまいました。この衝撃を皆さんにお伝えしきれない己が未熟を残念に思います。

 


 いったん市街地を離れて旧上岡小学校。「うわおか」と読みます。はい,ガルパンのファンの方はご存知ですね。「劇場版」で廃校の憂き目にあった大洗女子学園の面々が生活していた木造の学校がこれです。もうそのまま。もっとも,ここを見学した時点では私ガルパンを知りませんでしたけど。もし知っていたなら校舎内部の写真撮りまくってました。なんというかその,本当にそのままなんです。ガルパンに描かれた校内の間取りや調度や建物,私の小学校低学年ぐらいまでの木造小学校の「におい」,学校が地域の中心たり得た時代の真摯な教育,そんなものが詰まってました。再訪を期しております。
F-03  記憶装置

 ごめんなさい写真ありません。実はここ,旧美和中学校とともに最初に訪れた場所だったので,印象のないものは撮らなかったんです。


F-04  沈黙の教会、あるいは沈黙の境界

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 かつての講堂に墨汁のにおいが漂います。墨を湛えた枠を黒い鏡にして漆黒を覗き込む,あるいは現実に無い風景を映しこむ,そんな作品です。壇上にたたずむ黒い球体,周囲から見下ろす歴代校長とPTA会長。黒が醸し出す静謐の中,見る人はそれぞれの内面世界と対話します。 …… よかった。ずっと見ていました。墨汁,一部乾いちゃってたけど。

 

 で,ガルパンのファンの方はわかりますよね。あのシーンです。私はその前の,桃ちゃん号泣シーンでもらい泣きしてしまいました。

 

F-05  日渡の里プロジェクト 40人のクリエイターの40枚のポスター展「里山の人たちの暮らしがそこに在る。


 印象なかったんでしょうね。写真ありません。


F-06  嘘つきだった子ども、大子で真実に出会う

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 なんかストーリーがあるようです。もともとの図書館の調度と作家さんの怪しげな装飾が混然一体です。

 

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 ガルパンの声優さんの寄せ書き? いまなら理解できます。

 

F-07  Spring

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 廃業した温泉の,そのお湯を野外に引いてみんなが足を漬けます。皆さん思い思いの楽しみ方をしておいでのようで,芸術か否かはともかく大好評のようです。おっさん一人では楽しみようがなかったけど,それは個人の問題。


F-08  庭にて ― 風と森 II

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 森林の温泉(もりのいでゆ)が会場。常陸太田篇でも言わせていただいたので繰り返したくはないのですけど,有料施設でそこを利用しなければ見学できないというシステムのヤツ。特にここは対応が不愉快でした。作品を見せてくださいとおじさんに言うと,たっぷりと間をおいてものすごくいやな顔をして,本当はちゃんと温泉に入ってくんなきゃ困るんだけど,売店で何か買ってくれたらまあいいよ,と。800円でアップルパイ買いました。で,作品は宴会場のステージに乗せられたただの絵。屏風に描かれたただの絵。こんな物のために800円。いまだに納得いきません。

 …… もちろん作者が悪いのではなく,非常識の罪はあってもまともに接客のできない田舎のおじさんが悪いのでもなく,要するに県の担当者の交渉の仕方が悪かったのでしょう。


 以下の0915は,大子の町の真ん中にある古くて立派な個人病院の建物。今は漆工芸の保存と啓蒙をする団体の活動拠点だそうです。


F-09  茶の本

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 いい雰囲気の空間でした。書っていいものですね。


F-10  japan?

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 同じ形の立体3個を,地元の漆と中国の漆と合成塗料でそれぞれ塗ったもの。どうだ見分けが付くか? 見分けることに意味があるのか? 芸術家からの挑戦です。


F-11  Life Record ―生成と生業―

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 地元の木を使った木彫。うん,欲しくなった。


F-12  森の音のゆくえを辿って

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 ヘッドホンから木を切るチェーンソーの音などが聞こえます。う~ん,だから?


F-13  干渉する浮遊体

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 出ました機械モノ。自動的に生成されるシャボン玉がいつまでも浮かび続ける,儚いものを存続させる,そんな意味合いの作品。例によって機械がうまく作動しなくなって,係の人がときどき駄菓子屋で売ってるようなのでシャボン玉を吹いてました。機械ものダメ作品の典型。


F-14  velvet order(柔らかい秩序)2016 autumn sunlight

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 書の作品,と思ったらAIが描いたものだって。


F-15  折り紙ミューテーション

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 また出た。DNA折り紙(常陸太田篇参照)

 

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 何よりこの建物。昭和レトロと言いますか,これこそ町のお医者さんです。私の幼少時までは,お医者さんと言ったら町の名士で,緑多い街中にこんな立派な医院を構えていたものです。

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 診察室。こんな窓をすごく懐かしく感じるのは私の世代まででしょう。

 

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 展示会場になっていた2階は,元の入院患者用の病室です。柱に無数に開いた画鋲の跡。ここにカレンダーなんか貼って,入院の日数を数えたりしていたのでしょうか。

 

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 1階の廊下の突き当りには扉があって,その先はタイル貼り。広い裏口に通じます。その横の部屋が……

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 はい,これです。

 

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 きっと,裏口に救急車が付けられて,血まみれの患者さんが運び込まれたりしたのでしょうか。今は漆工芸の作業室として使われています。


F-16  大子 ロスト・アンド・ファウンド

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 撤退した銀行(ここもか。)の建物が「町おこし協力隊」という組織の事務所になっていて,その二階が会場です。古い8ミリフィルムの映像をだだ流しするだけの作品でした。それよりもかつてこの部屋で行われていた銀行幹部と地元有力者の密談とか,いま元の銀行窓口で地域のために働く若者の姿とか,そんなものに興味がわきました。


 大子町茨城県の北西の出っ張り,美しい里山の町です。茨城県最高峰八溝山日本三名瀑の一つ袋田の滝を擁します。中心市街地は箱庭のようにコンパクト。御多分に漏れず寂れかけていましたが,今回の芸術祭で随分盛り返しました。無料駐車場完備。お洒落な古民家カフェ,名産のシャモ料理のお店など,街歩きが楽しめます。

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 ↓ 芸大の学生の作品よりも,この商家の店先の生け花のほうが百倍芸術的でした。

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 ↓ 女性におすすめ,daigo cafe。

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 評論家の川本三郎さんをご存じですか。映画評や文芸評論で名を成した方ですが,この方が「年に一度は必ず行く」町の一つがこの大子なのだそうです。それと知られぬまま一人駅を降り,一日歩き回って,最後に駅前の飲み屋でビールを一杯引っかけて帰るのだとか。川本さんはかつて左翼に共感し投獄された経験もあるなどなかなか香ばしい経歴をお持ちですが,大子はその人生の波乱を乗り越えてきた老評論家が安らぎと郷愁を感じる町なのです。皆さんぜひ一度おいでください。


F-18  連鎖的可能性―袋田の滝  

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 袋田の滝に向かうトンネルの中を,次々と色を変える照明のチューブが照らします。この日の朝,テレビの朝番組で生中継にきていて,ちょうどスタッフの方々が機材を撤収するところでした。見てましたよ,お疲れ様でしたと声を掛けると,意外にも笑顔を返されました。東京のテレビの人なんて地方民にはもっと無愛想かと思っていたのはどうやら先入観,思い込みだったようです。


 さて袋田の滝


 ここの最大の問題は駐車場です。町営の無料駐車場は遥か1キロ先。歩きたくなければ滝の手前の民間駐車場を利用することになります。これも滝から遠いところは300円なのですが,近くだと500円になります。滝の入場料が300円なのに。


 とくにお気を付けいただきたいのは,一般車が入れる一番奥の橋のたもと,ちょっとしたロータリーになっているところ。道の傍が駐車スペースになっているのですが,もちろん有料500円。一人の老人,もとい,じじいが仕切ってます。このじじい,ある時は金を払おうとした客に,もっと奥に無料の駐車場があるよと教えます。その気になって行ってみると売店の駐車場。売店を利用する羽目になりえらく高くつくことになります。また駐車した客が山歩きの恰好をしていると,山歩きの奴は時間がかかって駐車場の回転が悪くなると言って車ごと追い出します。


 いったいいつの時代の商売だじじい。


 他の民間駐車場も,接客態度は大差ありません。車でおいでの方,ご覚悟ください。こんなことが横行しているうちは,茨城の観光地はダメなままでしょう


 すいません。つい怒りが。袋田の滝でした。


 300円の入場料を払ってトンネルに入ります。行きついたところが滝つぼのど真ん前の展望台。水量の多い時にはしぶきを浴びながらの滝見物です。
 エレベーターを昇れば,木々の間から滝の全景を見下ろす王道の視界が。紅葉の季節には,これは仙界の風景かというような錦織なす絶景になります。

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 地元では「日本三名瀑」と言ってますが,どうやらこれは「自称」の部分が大きいようですね。日光・華厳の滝と熊野・那智の大滝は国民だれもが認める名瀑ですが,第三はどうも他に名乗りを上げる所があるようで。でも断言します。この巨大な滝つぼの目前でしぶきを浴びる迫力,紅葉したカエデの向こうに見える黒い岩と白い滝の幽玄極まるコントラスト,そしてつり橋から臨む優美な横顔,いずれをとっても日本一だと。

 

 

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 こうして県北芸術祭百作品全制覇,スタンプラリーコンプリート! スタンプカードを送れば,一等賞はお米だとか。もちろん応募しましたよ。結果は以下の如し。

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 ま,こんなもんやね。

 

 でも,地元・茨城県の再発見となる実に有意なイベントでした。

 次回があるなら,また見に行きます。あえて制覇は狙わんと思うけど。

 

 

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山上のワークショップ

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 はい,合同合宿でワークショップやってきました。福島県との県境近く,里見牧場の中にある県営の宿泊施設,プラトーさとみ。牧草地を成す高い丘の上にあります。星を見る人の聖地です。生徒は一泊目グループか二泊目かを学校ごとに選択して一晩泊まるのですが,運営の高校の先生たちは二泊ともこの山上です。頭が下がります。

 追記 実はこの時すでに経営者が県から常陸太田市に移管されていました。そして利用料が倍近く3000円も値上げされることになります。 

 

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 晴れたらこんな絶景のはずが。

 

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 一泊目。吹雪。


 雪の少ない茨城県ですが,宿泊地の里見牧場,ここは雪の特異点。冬季に県北の山に登って見まわしたとき,風力発電の風車が回っている里見牧場近辺だけが真っ白に見えたりします。過去にも積雪で合宿が中止になったことがありました。


 で,下界が冷たい雨だったので多分,と牧場への道を登って行ったらやっぱり雪。吹雪いています。この合宿の最大目的,天体観測はこれで潰えました。うひゃひゃ。高校生が手製の大口径望遠鏡など持ち込んでいるのですが,一泊目のグループ(百人を超えます)のその準備は徒労になってしまいました。

 

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 天体観測がなくなったのでワークショップが3ラウンドになってしまった。げ,3回? 小石足りるかな。

 

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 プレゼントの小石を選んでもらっているところ。盛況でした,3回とも。


 雪の山道を一人辿って,70キロの道のりを水戸まで帰ります。宿泊する,という選択肢もあったのですが,ただでさえ満杯の宿泊所「プラトーさとみ」,運営のみなさんに迷惑かけたくないので帰ります。

 

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 翌日,晴れ。再びプラトーさとみへと,70キロの道のりを駆けます。深夜に晴れ上がったそうで,前半グループの高校生たちも天体観測できたとか。今夜のワークショップは予定通りの2回です。

 

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 昨夜の雪もだいぶ消えました。


 着いてから時間があったので,生物屋の聖地でもある里美牧場をひとめぐり。

 

 ノネコだ。 

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 他県の山ではどうなんでしょう。ここ茨城県北部ではノネコ,つまり野生化したネコを頻繁に目にします。彼らは人間を完璧に無視するので,我々とは一切干渉しません。自力で狩りをして暮らしているんでしょうが,三毛とか白黒ブチとかの目立つ模様でよく獲物が獲れるよな。

 

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 富士山のてっぺんだけ見えた。

 

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 夕食は牛肉入りのカレー。おいしゅうございました。

 

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 天体観測では満天の星空。天の川もくっきり。私も三脚を据えてシャッター押してみましたが失敗。F1.2のレンズを絞り開放にして撮ったらプレアデスがにじんでしまいました。難しいなあ。

 

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 これは人からもらった写真です。天体写真撮る人って神?

 

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「スターウォッチコンテスト」に挑む高校生たち。こちらも盛況です。気温はマイナス10℃なんですけど。

 

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 冷え切った体に暖炉! わがまま言ってプラトーさとみの職員さんに暖炉点けてとお願いしたら薪を探してきてくれました。ああ暖かい。ああありがたい。

 

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 運営の若い先生たち。本当にご苦労様です。

 

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 ワークショップはもちろん盛況。女の子ばかり写ってますが,男の子メインの時もありました。写真撮る気にならなかっただけさ💛

 


 アインシュタインは,科学と宗教は根を一つにする1本の木の枝であると言った。
 本当に霊が見える人の話。ひだる神の話。
 サンタクロースは実在するか?
 神はいるか?
 再現性のないものは科学ではない。だが,再現性のないものは存在してはいけないのか?
 西洋科学は不自由である。なぜなら「分析」を手法とするから。
 不思議な現象があとから解明された例。ひだる神。心臓移植。
 ユング共時性偶然の話。不思議はこの世に満ち満ちている。
 本当に不思議なものが存在することで,私は自分なりの「自然観」を作り上げたいのです。


 なんて話をして,生徒さんから不思議体験なんか聞かせてもらって,石の不思議な力の話をして,プレゼントの小石1個,自分で選んでもらいます。リピーターの子にもう一つあげようとしたら,「前にもらったのを大切にしてるから」と断られました。ちょっとうれしかった。

 

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 小石,ずいぶん無くなってしまいました。なあに,半年かけてまた集めます。高校生たちの思い出になってくれるのなら。

 

 

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貴石のプレゼントを買いに,秘密のパワーストーン屋さんへ

 次の金・土・日に,例の合同合宿(科学とオカルトの間に - ジノ。)の冬季版があります。二泊ともワークショップの講師でお手伝いに行きます。2回ずつ二日間,計4回のワークショップ。


 大変だ。高校生たちにプレゼントする貴石の小石が百個以上必要だ。買いに行かねば。


 というわけで車を飛ばしてやってきたのが,日立にある古いなじみのパワーストーン屋さん。珍しいものが格安で手に入る秘密のお店です。本当は宣伝してあげたいんだけど,店主がとにかく商売不熱心。せっかく来ても閉まってたことが何回もありました。健康で文化的な最低限度の生活さえできればいいと思っている風で,そのあたりも私がなじみにする理由です。何かにつけこういう基準で好みの店が決まるので,行きつけの店のつぶれる率の高いことったら。


 やっぱり店のシャッターが閉じていましたが,ちょうど車でご帰宅の瞬間をとらえて,車を降りたところで声を掛けました。あ,見つかっちゃったあという顔をされました。いや,こっちは客だから。

 

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 で,今日はこれだけご購入。いつものタタミの部屋で開陳。

 

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 小石だけ買うつもりだったんだけど,ついこんなものも。

 

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 地元・常陸大宮市で採れた珪化木。でかい。そして品がいい。ちゃんとメノウ化までしています。こういうものに相場があるのか知らないけれど,安い。これほしい。こんなのが手に入るのがこの店のいいところ。

 

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 目的の貴石の小石は十分量がありました。これだけで,ショッピングモールに入ってる石屋さんならウン万円です。


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 玉髄製の台座みたいなのをおまけに付けてくれました。何に使おうかな。

 

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 値引きまでしてくれて,これで総額五千円かからないんです。ありがたや。


 こういう個人商店の店主がマイペースにのんびり商売できた時代は過去のものになりつつあります。頑張って(どう見てもこの店主頑張ってませんが)お店を続けてほしいものです。


 さあワークショップだ。高校生,喜んでくれるかな。

 

 

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ブログを始めて3か月め。 ありがとうございます。

 

 

 このブログを始めて3か月経ちました。毎週2~3篇更新できてます。我ながら驚いてます。お客様のアクセス数はようやく3ケタになりました。

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 若い人ならツイッターを併用してアクセス数をぽんぽん上げるなんてこともできるのでしょうが,私ガラケーだし。仕事も忙しいし。そもそもアクセス数をあげることが目的じゃない。

 

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 ブログを始めても3か月もたない方が多いとか。わかります。誰も見に来てくれないというのはかなりハートに来ますし,更新も苦痛でしょう。私が続けられたのは,むしろこれがストレス発散になっていたからです。数少ない来訪者の皆さん,本当にありがとうございます。特に開始そうそう読者になってくれたmeshigakuitaiさん,お礼の仕方がわからない。いくらでもご飯おごります。

 

 

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 私がお世話になっているこのはてなブログですが,今は無料のサービスを利用しています。有料の「PRO」というサービスもあるそうで。デザインの自由度が上がるとかいくつもドメインが使えるようになるとか。 ・・・う~ん,デザインは今ので別に構わないし,ドメインなんていらないし,しばらくはこのままでいこうかと思います。


 文章を書くのが好きで,写真を撮るのが好きで,それを公開できるこのブログというメディアがあることに感謝しています。

 

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 このブログ,とにかく「大人の文章」であることを心掛けています。読んでくれる人が不快になることが決して無いように。他人に押し付けるような主義主張は持ち合わせておりませんしね。

       


 今のところ閲覧数が多い記事はこんなところ。数打ちゃ当たるもんだなあ。なぜか検索エンジンにまったく無視される記事があって戸惑ってます。SEO検索エンジン最適化)ってのを勉強すればなんとかなるのかな。

ブルーライト・ヨコハマ - ジノ。

パートナーたち - ジノ。

百里基地航空祭2016 がんばれファントム - ジノ。

花物語 スミレ - ジノ。

大洗水族館でクラゲを見て癒される - ジノ。

ガチャポンの真珠湾作戦の艦艇が揃った。 第一航空艦隊出撃です - ジノ。

 

 


 大学で生物学を専攻し,今もそれに少しだけ関わる仕事をしています。専門は顕花植物と無脊椎動物。出世願望ゼロ。不義にして富みかつ貴きは我においては浮雲の如し。なんとか飯が食えて,趣味の範囲で生物を見続けられればそれで幸せ。その幸せをちょっとだけ人にも知らせたいというのがこのブログの目的です。

 

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 酒,たばこ,麻雀,ゴルフ,パチンコ,競馬競輪おフネにバイク,風俗のおネエちゃん,一切興味ありません。何かを収集する趣味もありません。こんなおっさん,気持ち悪いですか? 他にやりたいことがありすぎて,こういう一般的な趣味に行くヒマがないんです。ただ我が道を求めゆくのはドイツ戦車兵だけじゃあない。恰好つけるなら,私の人生の目的はひたすら自己実現。その過程で誰かを幸せにできたなら言うことなし。

 

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 どうやらこのブログ,もう少し続けられそうです。毎週日曜の晩に更新します。この3か月飛ばしすぎた感があるので,ペースは落とそうと思います。どうかお付き合いの程,よろしくお願いいたします。

 

 

 

コウヤボウキを拾いました。高野箒です。

 

 コウヤボウキの高野箒を拾いました。いや,ふざけてはいません。

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 いつものフィールドを歩いていたら,(植物の)コウヤボウキを束ねてほうきにしたものが落ちていたのです。誰かがコウヤボウキを刈って歩いて,形になったあたりで落としたのでしょうか。もったいないことです。
 むかし(今でも?)高野山ではこうして作った箒で掃除をしたのだとか。これがこの植物名の起こりですが,床しいことです。驚くべきは,こんな聖域での習慣が一般にも知られていて,それが植物の正式和名になっていること。そこには日本人と植物の親密かつ永い関係が垣間見えて,これもまた床しい。


 高野山には一度,ごく短時間の観光に寄ったことがあるだけで,事実上何も見てはいません。でもそこで永きにわたり連綿と続けられた祈りの生活に想像が及ばないわけではありません。早朝の暗い堂内,声明,蝋燭の灯り。掃き清められる境内。黒ずんだ木の廊下を進む僧侶たち。この科学の国で,コンピュータやメディアが隅々まで行き渡ったこの国で,いまこの瞬間もいにしえの教えを守っている人たちがいます。もちろん僧侶だって情報管理にコンピュータは使うし,先日は高野山の青年僧侶たちがファッションショーを開いたというニュースに思わず瞑目したりしましたが,結局そういう若い僧侶たちも最後には伝統の中へ帰還していくのでしょう。


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 コウヤボウキ。キク科の小低木です。暗い林床で針金のような細い茎を盛んに分岐させ,枝の先に小さな頭花を付けます。秋の終わりを告げる花です。

 

 

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暑い日はここ,大谷資料館

 

 わんわんと鳴くセミの声。ねっとりとまとわりつく水蒸気に満ちた大気。吹き出す汗は午後の微睡も許してくれません。およそヒトが暮らすに不適な,その発祥の地から遠く遠く離れたアジア東端の島国の夏です。われわれの身体はこんな気候で快適に暮らせるようにはできておりません。


 11月にこんな文章書いていると,文字というものの不思議さを感じずにはいられません。時間の流れからその「とき」が切り離されて存在し続けるのですから。


 ま,夏になったら読み返してね。


 というわけで,特に関東近県の方に絶好のひんやりポイントをご紹介いたします。栃木県宇都宮市大谷おおや大谷資料館です。


 関東では,家を囲む塀の石材としてポピュラーなのが大谷石おおやいし。旧帝国ホテルの建材としても有名ですが,さて皆さんのお宅の周囲にはありますか? いったい何県あたりまで目にできるものなのか知りませんが,とにかく茨城ではごく普通に塀に使われています。ただ東日本大震災では,心棒を入れない工法が災いして大谷石の塀ばかりことごとく崩れ,かなり評判を落としました。


 とはいえ軽く,加工しやすく,耐火性に優れ,緑がかった地に不規則に入る「みそ」が木目のようなアクセントになった変化のある美しさ,いずれもただの凝灰岩から一線を画す石です。こういう美観と実力を兼ね備えたもの,私は好きです。


 で,江戸時代から続くその地下採掘場が公開され,入坑できるようになっています。これが大谷資料館。


 前置きが長くなりました。

 

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 周囲の風景からしてこう。いやがうえにも気持ちが盛り上がります。ちなみに大谷資料館HPには「敷地が広範囲のためカーナビに住所で入力すると迷子になりますのでご注意ください!」とあります。ふふふ。

 

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 駐車場は広く,係の人がきちんと誘導してくれます。茨城の観光地に最も見習ってほしいところ。袋田の滝とか。

 

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 古トラック,いいなあ。これも展示の一部だったと思うのですが,残念ながら今はもう置いてありません。

 

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  業務用の坑道入口。冷たい風が吹き出してきます。

 

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 冷たい風を受けて,イワタバコが咲いていました。

 

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 とにかく,いろいろな映画・CM・MVの撮影に利用されています。

 

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 階段を下りていくと,みるみる空気が変わってきます。

 

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 どーん!

 

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 HPにはコスプレ撮影禁止!とありました。やった人がいるのでしょうが,まあその気持ちわかります。異世界感がハンパありません。

 

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 外気温32℃,坑内気温14℃。一枚上着が必要です。

 

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 大谷石の正体は「グリーンタフ」,緑色凝灰岩と言われるものの一種です。新第三紀中新世という今から2300万年から500万年前の時代,日本列島の大部分が海中にあって火山活動がとてつもなく活発だったとき,軽石を含む火山灰が海中に大量に降り積もりました。これが固結したのがグリーンタフ,名前の通り緑色をしているのが特徴です。その中で今から1200万年前,この大谷付近に特異的に堆積した火山灰が大谷石のもとになりました。「みそ」の正体は植物片だとか。

 

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 ちなみにグリーンタフ。私物です。

 

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 ステージもあります。若い人がキメポーズ取ってました。

 

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 謎の石柱。

 

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 料金800円は,照明やら維持管理やらを考えれば適切だと思います。ごめんなさい偉そうに。

 

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 坑内の空気が外気と触れると霧が発生します。夏にだけ見られます。

 

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 そろそろおいとましましょうか。不思議なもので,この頃には外の熱気が懐かしくなってます。

 

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 観音様も大谷石。そばにお寺があって,そちらにはもっといわれのある観音様がおられます。

 

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 ガレージも大谷石

 

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 どうやらつぶれたレジャー施設のようです。やっぱり大谷石

 

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 いきなりですが戦場ヶ原。足を伸ばせば別の涼しい思いもできます。土日はいろは坂が混みますけど。

 

 

 

 夏が恋しくなりました?

 

 

 

 

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秋の終わりのものたち  【虫】

 昔のさだまさしの曲に「空蝉うつせみ」というのがありました。老いた夫婦が寂れた駅のホームで都会から迎えに来る息子を待ち続けるという歌でした。伴侶がいるのなら幸せですか。立派に育った息子が都会で働いているなら勝ち組ですか。でも歌われているのは,ただ寂しく悲しい,肩を寄せ合うことしかできない二人の老人でした。


 生物学的に見れば。このつがいは繁殖に成功し,次世代が繁殖年齢に達している。生物の個体として成功だ。遺伝子は正しく次世代に伝えられ,あとは自分が静かに舞台から消えていけばよい。でもしかし,「空蝉」の全編に流れるこの悲しみは何でしょう。

 

 生老病死は,全ての生き物が持つ業です。


 生きる苦しみと,老いゆく悲しみと,病いの苦しみと,死にゆく悲しみと。生物にはすべて,人に通じる部分があります。生きとし生けるもの全てに喜びや悲しみがある,と思うのです。

 

 今日,フィールドで最後の日々を過ごすバッタたちを見ました。前回訪れた時に見たクモガタヒョウモンやメスグロヒョウモンといった蝶たちは枯野に溶け去るように彼岸へと去り,直翅目ちょくしもくの昆虫たちがカーテンコールに現れていました。

 

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 フキバッタは陽光の当たる地面にうずくまり,翅のない鮮やかな緑色の胴を輝かせつつも,思うように体が動きません。縁側から動けぬ老人そのものです。

 

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 イナゴは……最初それがイナゴとは思えませんでした。どす黒く変色した姿は,あの夏を軽快に跳ね回った生き物と同一物とは思えません。命が朽ちていくその姿です。

 

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 よろよろと小道を横切るオオカマキリのメスは既に産卵を終えています。私が至近からカメラを向けても,一度うさん臭そうに顔を向けたきりでした。

 

 どの眼にも,老いてそして死にゆく戸惑いと怒り,悲しみが満ちていました。

 

 1年を一生とするその生を生き抜き,繁殖も成功させ,次の世代にこの天地を譲り渡して静かに消え行く。虫なんてそんなものと思っていたし,実際に誇り高く死を迎えるクロアナバチも見ました。だがこの草むらの虫たちの戸惑いの表情はなんでしょう。植物が枯れゆき陽光が細り大地から熱が消えてゆく。しぼむ風船のように生気が周囲から自分から失われていく。なぜ死ぬのだ,ではありません。なぜもっと生きられないのだという怒り,戸惑い,そして悲しみが,その眼に満ち溢れていました。

 

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 いま私のカメラの前に,オンブバッタの夫婦がいます。オンブバッタをご存知でしょうか。細長いバッタで,メスが体長4センチに対してオスは2センチ。体重差は8倍に達しましょう。その大きなメスの背中に小さなオスが乗る。乗ったままになる。オスがどう食事するのか知りません。夏の生気ほとばしる季節には相手をとっかえひっかえしながら繁殖します。オスを乗せたメスは翅を使えずただ跳躍のみで敵をやり過ごすのですが,伴侶を常に持ち歩くという戦略は功を奏しているようでこの一族は結構繁栄しています。……繁殖に成功したあと,バッタはどうするのでしょうか。ヒトはどうなるのでしょうか。

 

 時期的に産卵を済ませているはずのオンブバッタ。もはや次々と相手を替える活力もなく,互いにこれが最期の伴侶でありましょう。そのメスは明らかに,近づく人間やカメラに気付いています。しかし夏の頃,オスを乗せて華々しく跳躍した若さはもう彼女からは失われています。ぴょいと1,2センチ跳び,あとは芝草の間にごそごそと潜り込む。それでは写真にならないと追い出すのですが,草に足を取られよろよろと歩むのみ。オスはというと,もはや姿勢を保つこともできずにメスの背で斜めになり,片一方の後ろ足をだらりと下げていました。眼の焦点も定まっていない風です。必死の形相で転びながら逃げる婆さんが,さらによぼよぼの爺さんの手を引いている図に見えて,私にはそれ以上追うことができませんでした。

 

 生きる苦しみと,老いゆく悲しみと。

 

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 実はこのあともう1頭,そうただ1頭のメスのオンブバッタを見ました。背にパートナーはいません。日なたに置いてやろうと手に乗せてみましたが,抵抗らしいこともせずただ前肢を少し動かしてみせるだけでした。繁殖が成功した証に,オスが乗る背の鞍の色がちょけています。オスが消えたのは最近のことなのでしょう。共に生を謳歌したパートナーは,ある日ぽとりと背中から落ち,それきりに。

 

 生まれて,出会い,別れ,そして死ぬ。ヒトと虫の一生に,それほど大きな違いがあるとは思えないのです。

                    (2014年11月13日)

 

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