ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

この夏に見たもの 火星とハチとその他もろもろ

 

 夏の総括にはまだ早い気がします。水戸は今日も暑かった。水戸でさえ暑かった。皆さんのところはいかがですか。


 昨夜はせめてもの暑気払いにとひたち海浜公園のコキアライトアップを見に出かけたのですが,駐車場代払って入場料払って,雷雲の襲来で中止になってしまいました。しかも駐車場を出るのに1時間もかかり,もう何が何だか。皆さんにコキアの丘が虹色に輝くのをお見せしたかったのに。


 暑い夏でした。

 

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 台風14号後にも着生ランを拾いに行きました。強がって見せてますが,実は暑気あたりで体はガタガタ。

 

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 この時に見たツクツクボウシタケが,この夏に見た唯一の冬虫夏草になりそうです。


 そういえば,火星大接近でした。夕空に西から金星,木星土星,火星と並ぶ壮観な夜空でした。天気は良くなかったけど,何とか晴れ間を見つけての観測。望遠鏡の目視ではそれなりの見えたのですが,私の写真機材では撮影は無理でした。恥ずかしいけど2枚だけ。

 

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 金星。夕空に西を指し示す明星。

 

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 火星。次は15年後ですか。私はまた会えるのだろうか。

 

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 昨年のイヌザンショウの花。珍しいものがいました。

 

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 オオセイボウ。青い蜂と書いてセイボウ。他のハチの巣に寄生するという珍しい生態を持ってます。今年じっくりと撮りたかったのですが,すっかりチャンスを逃しました。また来年。

 

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 今年見たのは,ルリシジミ。

 

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 ハラナガツチバチ。

 

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 ルリチュウレンジバチ。当たり年だったようです。ツツジに産卵し,幼虫はその葉を食べます。成虫に毒針はありません。これがハチの原初的形態。

 

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 こんな地味なイヌザンショウの花に群がって,ただ一心に。

 

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 触角拡大。こんなものでも決して単純な構造ではありません。本当に,細部に神は宿る。

 

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 アラクノフォビア(クモ恐怖症)の人ごめんなさい。実はハエトリグモが好きで,たまに撮らせてもらいます。正面顔もいいのですが,横のつぶらな瞳もなかなか。

 

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 今日も雷雲が来るようです。水戸には夕立はめったに来ないので貴重です。少しは涼しくなることを期待しようかと思います。


 もう一息。酷暑にあえぐ地方の皆さん,どうかご自愛ください。

 

 

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静岡・山梨で見たもの 【ただし閲覧注意 】

  

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 まず最初に。検索で初めて私のブログにおいで下さったお客様,早々ににお立ち去り下さいませ。あなたの望む情報は一切ありません。むしろ大変なモノを見る羽目になりますぜひっひっひ。


 というわけで,先日の巡検で撮った写真の残りから,適当にピックアップしてこのネタを終えようと思います。久しぶりの遠出だったし,たまたま涼しい期間だったので気分よく撮りまくって参りました。


 甲斐の山々,見事でございました。3000メートルクラスの山が筑波山レベルの山々の後ろにどかんどかんとそびえる光景は,茨城では考えられません。これだけでああ眼福眼福。

 

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 鳳凰三山だそうです。走る車中からとていい写真は撮り損ないましたが,地蔵岳オベリスクがちょこんと見えてます。

 

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 甲斐駒ヶ岳照葉樹林帯から高山帯までの植生変化が一目で見えるアングルもありました。こんな山があるんだなあ。

 

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 櫛形山。低い山じゃのう,と思ったら2000メートル。だめだ,茨城県とは尺度が違いすぎる。ちなみにこれも,太平洋の彼方からやってた「海山」です。丹沢や伊豆半島と同じ。こいつらがぶつかってきた衝撃が日本アルプスを作りました。

 

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 八ヶ岳! 大好きです。いわゆる南八ヶ岳の名峰たち。右の尖っているのが赤岳,真ん中の崩れ気味なのが権現岳,左の丸いのが編笠山。こんなのを毎日見ながら生活できるなんて。

 

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 そして……もちろん霊峰富士。甲府盆地からの,しかも夏の姿はいまいち感がぬぐえませんが,富士が見えるだけでありがたい。

 

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 初日の山登り。山の人には珍しくないでしょうが,こんな谷渡りもスリルでした。

 

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 糸静線の東側の火成岩。フラッシュ焚いたらこんな色に写ってしまった。

 

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 向かい側の台地,実は大昔の八ヶ岳からの火砕流,もしくは岩屑なだれの堆積物です。山からの距離は50キロあるのですが,数十メートルの厚みで堆積してます。もし人の町があったなら大変なことになっていたでしょうね。日本各地に,これからそうなる場所があります。忘れてはいけません。私たちは,とてつもないスリルと危険に満ちた大地に暮らしているんです。

 

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 貝化石の露頭。ここは採集禁止。もっとも,このレベルなら茨城でも採れるんじゃないかな。

 

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 イタヤガイ。

 

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 ツノガイ。こんなものたちが大昔のどんな海でどんな暮らしをしていたのか,考えるだけで楽しくなります。

 

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 富士川の河床で地層の観察。級化構造,火炎構造,岩体貫入,斜交層理などなど,教科書にあるような構造が一通り見られました。

 

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 四万十帯の粘板岩。層理があまりに美しくて,おみやげに拾ってきました。

 

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 2泊目の夜,アゲハモドキが灯りに惹かれて来てました。これで蛾なんです。いやそれも人間の身勝手か。

 

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 熊が。

 

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 ほぼ埋まってしまった西山ダム。南アルプス周辺は山の崩壊が激しく,ダムはみるみる埋まっていくそうです。なんでかというと,南アルプスは今でも隆起を続けているから。年間3ミリほど。たかが3ミリと笑うなかれ。千年で3メートル。地質学的には驚異的な数字です。日本列島は今でも活動を続けているのです。この長く継続する営為の前に,人間はなんと無力なことでしょう。

 

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 そのダムにできた中島に,なんとも美麗なシラカバ。人のなしたものを軽く笑い飛ばしてます。

 

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 それでも人の経済活動は続く。「地図に残る仕事」……実はこれ,リニア新線の工事。愚かしくも醜くも政治が絡んだ結果として秘密主義が徹底しているのですが,実は先進導坑だか斜坑だかの工事はもう進んでます。リニアは南アルプスをトンネルで越えていきます。というかその路線のほとんどが地下。斜坑工事だけでもう膨大な土砂が掘り出されていて,処理しきれずあちこちの河原に野積みになってました。それでも坑口のある市町村は大いにうるおっているのだとか。なんか嫌ですね,といっては大人げないですか。

 

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 技術の粋を凝らしたリニア超特急です。願わくばこんな野の花に笑われる羽目にならぬことを。

 

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 すっかり寂れた十谷の町のお寺の観音様。人の世の盛衰を見つめておられます。

 

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 十谷の町の立派な門構えの家。早朝で入ることはかないませんでした。再訪を期して。

 

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 十谷の空き家の庭先に朝顔。人の世が終わった後には,こんな風景が広がるのでしょう。

 


 最後に,初日に受けた駿河の国の洗礼の話を。

 新露頭に登っていく途中でした。足元の岩屑が動いたように見えたので除けてみたら……

 

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 で,出たあ。ヤツワクガビル。生まれて初めて,動いてるのを見ました。茨城には生息せず,とてもテレビで放送できる代物でもありません。10センチ以上ありましたが,一説には30センチクラスもいるとか。ぐええ,気持ち悪い。かなり素早く動き,力も強い。人間とは一切干渉せず,ミミズを食べて暮らしているのだそうですが,もうその存在自体が脅威です。そうか他国にはこんな生き物もいるんだ。


 早川いくを大先生が名著「へんないきもの」で「C級怪奇映画で主役を張れる」と絶賛された怪生物です。いつか見たいものだとは思っておりましたが,まさか地学巡検で遭遇するとは。せっかくなので早川先生の名調子を少しだけ。


 このヒルの実際の主食はミミズ。でかい管が細い管をのたうちながら呑み込んでいくという,胃袋のあたりが酸っぱくなってくる食事風景だ。ラブラブなカップルが手をつなぎ,ランラランとハイキングに行ってこんなものを見た日にゃ2人の恋も終わりだろう。
 早川いくをへんないきもの」バジリコ株式会社2004より

 

 おまけ。

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 ネットでクガビルを調べようとしたら,「クガビル根付(捕食中)」の通販を見つけました。これ作った人,絶対気が触れてます。大好き。

 

 

 

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山の湯,ステキな山宿でした

 静岡・山梨行の続きです。


 この地学巡検というイベント,何回か参加させていただいてますが,何が楽しいってその宿泊する宿に心震わされることでございます。まずフツーじゃない。一人一泊1万円以下,団体受け入れ可,できればフィールドに近いこと,なんて条件が付くと,公共の宿か場末のあばら家か熊の出る山中か気の回りかねる疎放な民宿か。いつも忘れがたい旅の思い出になります。

 

 さて今回の白眉は2泊目の宿。「山の湯」といいます。山中の一軒宿です。山梨県十谷温泉郷 温泉民宿山の湯 山梨県南巨摩郡富士川町十谷

 

 国土地理院地図閲覧サービスより

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 まさにこの温泉マークの場所です。驚くべし,国土地理院の地図に存在証明。もう地図好きにはたまりません。これ,この地図の温泉マーク,オレの宿なんだ。そう自慢できるオーナーがうらやましい。

 

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 入口。十谷峠に向かう道沿いにあるのですが,いやあるというかなんというか,道の高さにあるのは駐車場だけ。建物はほぼ道の下。でもそれだけなら,山宿には珍しくもないかもしれません。

 

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 これ,客室前の廊下です。何かヘンでしょ。よく見てください。片側は,道路ののり面そのままなんです。急峻な斜面に刻まれた道路の,斜面の崩落止めののり面がそのまま廊下の壁。こんな作りの家,見たことある? ……もうこの時点で私の心臓わしづかみ。素晴らしい。

 

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 遠望。バスがいるのが道路の高さ。良く言えば清水寺ばりの懸崖けんがい造り。悪く言えば山奥のダム工事現場。

 

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 窓からの風景。絶景です。

 

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 急斜面にあります。普通こんなところに家作るのはツバメくらいのもんでしょう。

 

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 懸崖造り。驚くべきは,露天風呂をはじめとしてかなりの部分がオーナーの手作りだということ。

 

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 お品書き。オーナー手作り。

 

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 宿の中の移動はキホン階段で。これもオーナーの手作り感ありあり。

 

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 客室一つをつぶして作ったという展望トイレ。宇宙からの指令が来たとしか思えない蛮行。もちろんこういうの大好きです。

 

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 夜の展望トイレ。おのれの姿丸写り。オーナーここまで考えたろうか。

 

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 朝の露天風呂。悠々たる天地を感じながら。

 

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 この露天風呂の建物も,たぶん手作り。

 

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 風雅なコーナー。もちろん手作り。

 

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 大工仕事,山菜採り,クマ撃ち。なんでもやっちゃうオーナー。ああ,私もこんな人生にしたかった。


 食事はイワナの焼き物やら山菜の天ぷらやら,地場のもの中心で美味しかった。民宿ながら驚くほど清潔で,オーナーのご家族が力合わせてサービスしてくれました。

 

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 ちなみに十谷温泉郷は,十谷の集落を越えた先にあります。この狭くて急な坂道を,よくぞバスで登ったものです。

 

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 十谷の集落。天空の王国のようです。十谷峠越えというのが標高1700メートルの険しい山道。その十谷峠に向かう旅人のための宿場町だったのでしょう。かつては随分栄えた風で,かなりの戸数があり立派な造りの家も見受けられます。でも歩いてみると,半分は空き家でした。ちょんまげの昔ならいざ知らず,もはや人の往来は途切れています。温泉目当ての人が来るのみの,静かな山上の街です。実はそういうのも私の好み。今度はプライベートで長逗留したいなあ。

 

 

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糸魚川-静岡構造線を見るということ

 

 人の趣味性向とはまことに不思議なものです。どうしてここまで多様なのか。電柱を見ればみんなオシッコしたくなる,くらいにわかりやすければ世の中単純でいいのですが。


 というのも,マニアックもマニアック,糸魚川‐静岡構造線」を見るためだけのバスツアーに参加してきたんです。更新が遅れてランキング順位も下がったのはそんなわけ。


 出不精の私に声を掛けて下さったのは,これを主宰する高校の地学の先生の団体。ちょっとだけお手伝いなどするご縁なのですが,それにしてもよくもまあこんなマニアックな企画を思いついたこと。でよくもまあ人を誘うこと。もちろん二つ返事で応じてしまいました。

 

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 朝の6時に水戸を出て,静岡市の山中に14時に着き,さらに1時間山道を登ってようやく到達。はいこれです。

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 ……さすがに解説が要りますね。左側の切り立った崖が新生代の火成岩,右側の地面がそれよりはるかに古い時代の堆積岩が崩れた粘土状の地層。この崖の線が,東北日本西南日本の境目なんです。

 

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      ウイキペディアより転載したものに加筆


 かつて大陸の一部であった日本列島が東北日本西南日本に分かれて太平洋にこぎ出したのが2300万年前。そしてその1800万年後,両者は東西から引き寄せ合いぶつかり合い,そこに太平洋のかなたから丹沢やら伊豆半島やらが突っ込んできて,中部山岳地帯ができていきます。その,東北日本西南日本が衝突する一本の線,本州中部を南北250キロにわたって貫く断層線として認識されるもの,それが糸魚川‐静岡構造線(糸静線)です。

 

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 オーバーハングしてるの,わかりますか? そうこれは逆断層。ものすごい力で大地が押し合った姿です。

 

 糸魚川‐静岡と言いつつ,実は静岡市内ではこの大断層が不明瞭で,これまで良い露頭ろとうが知られていませんでした。あ,露頭というのは地層とか断層とかが地表で直接観察できる場所のことね。その露頭が,糸魚川市の方だと観光地になっている場所まであるのに静岡市でははてどこか。それが昨年,数十メートルにわたって観察できる大露頭が発見されたのです。この発見の経緯がまたすごい。大学教授を定年退官した地質学の先生が,趣味のハンググライダー(!)で飛んでいて上空からあ,あれはと見つけたのだとか。にわかには信じがたいけど,どえらい地質屋さんもいたものです。

 

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  この「新露頭」,もうすでに新聞や雑誌で紹介されていて秘密でも何でもない場所なのですが,私有地を通らねば行けない場所にあることを申し添えておきます。行かれる場合はきちんと許可を取ってね。

 

 東北日本西南日本,50ヘルツと60ヘルツ,濃い味と薄味,巨人と阪神,納豆食うか食わんか,ボケにツッコミあるかないか,宇宙人に連れ去られたことあるかないか。そんな東西の接する線が,この糸静線なのです。ぜひ跨いでみなければ,私は全国区になれません。やらいでか


 すでに何かがおかしい私ですが,そんな人たちの集まりなので違和感はありません。

 

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 これぞ「断層跨ぎ」。跨いでやったぞ千数百万年。撮ってもらったら手ブレだったけど,まあちょうどいいか。


 バーレスク東京に3日通うよりもお高いバス代払ってなにをやっているのか,とは思います。でもこれは,私にとっては水着のおネエちゃんよりも意味のあるものです。ゴルフ場で1日過ごすより,はるばる遠いラーメン屋に出向いて行列するより,ずっとずっと私の心を養うものです。知識として頭にあるものの実物を見る。自然物の知識を尊ぶ者にとって,これほど重要なことはありません。

 

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 バスは静岡からさらに奥地を目指します。山越えして甲斐の国へ。新川露頭。山梨県側で有名だった露頭で,多くの教科書に掲載され,天然記念物にまで指定されていた断層露頭でしたが,数年前の台風で崩れて見る影もありません。

 

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 西川温泉露頭。この崖が糸静線の新生代側。この斜面がそのまま断層崖。

 

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 カワラナデシコが咲いてました。水戸のより色が濃い。

 

 

 帰りの車中で私の前席の二人が面白い会話を繰り広げていました。片や地学の知識に特化した,特に新生代第四期を語らせたら無敵の50代。片や人生これからの20代。
「こないだ大洗行ったら白ぽちゃでメガネかけてリュック背負ったお兄ちゃんがいっぱいいたんだけど,あれなにけ?」
「ああそれはガルパンのイベントがあったんでしょう」
「ギャルパン? それなんのことけ?」
ガルパンです。ガールズアンドパンツァーの略で」
「ガールズ? 女の子け」
「戦車道をする女の子たちのお話です」
「それって実在すんのけ? モモクロみたいに」(もうこのあたりで私は爆笑)
「いえ二次元の,アニメなんです」
「それが何で大洗なのけ?」
「学園艦の所在地が大洗という設定で」
「がくえんかんって何のことけ?」
……以後えんえんと続くのですがこれくらいで。この年配の先生のベッタベタの茨城弁をモニター上でお伝え出来ないのが本当に残念です。


 ひとしきり笑ってから,ふと思いました。この50代にとって,ガルパンはどこか遠くにあるものです。糸魚川‐静岡構造線を見に行くことに比べれば,自分の人生に資することのない,意味性のまったく存在しないものです。同様に,大洗鹿島線の切符を買う行列に並ぶ兄さんたちには,ただガケを見るためだけに何万円もかけることなど信じがたいことでしょう。


 ひとそれぞれに好きなもの。

 ひとと違うのはステキなこと。

 それはきっと,その社会の健全さのバロメーターでありましょう。

 

 

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コニシキソウ,雑草という草はないけれど

 

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 夏です。雑草の季節です。


 わがささやかな庭の,夏の雑草の繁茂の仕方がもう尋常じゃない。わずか5ミリの芽生えを1週間見逃すと成体に育ち,さらに1週間後には種子をばらまいているという回転率で加速度的に地面を覆っていきます。トキワハゼ,スベリヒユウラジロチチコグサ,トキンソウ,ドクダミ,メヒシバ,ヒメジョオンカタバミにオッタチカタバミセイヨウタンポポ,などなど。ツルニチニチソウは駆除に成功しましたが,セイタカアワダチソウは一度駆除してもいつの間にか侵入を繰り返して毎年イタチごっこです。そんな雑草たちの中でも,特に夏場の宿敵となるのが今日のお題,コニシキソウであります。

 

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 トウダイグサ科ニシキソウ属。草本から木本まで,湿地から砂漠まで,低緯度から高緯度まで,栽培食用作物からギネス認定「世界一危険な木」まで,多肉植物まであるという多様性のデパート・トウダイグサ科。その中で「雑草」に特化したのがこの属です。細い茎でひたすら地を這い草刈りを逃れるのは戦場での匍匐ほふく前進を思わせます。頭の上を弾丸ならぬ草刈り鎌がびゅんびゅん飛び交っても,ものともせずに版図を広げていきます。踏まれても平気。切られてもすぐに節から新品の茎を出し,掌を広げるように地を覆っていきます。倒す方法はただ一つ,根のある原発地「グラウンド・ゼロ」で引っこ抜くのみ。コアを破壊しないと倒せない「使徒」や「叫竜」みたいですね。

 

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 これだけ大きくなってもコアならぬ根は一か所のみ。隊長!ヤツの弱点はそこです!

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 引っこ抜けばそれで済むと思う? いいえ,ヤツはすでに次の手を打ってます。よく見て。もうびっしりと花を付けています。抜かれても実は熟し,微小な無数の種子をばらまくのです。一個一個の種子がわらわらと芽生え,芽生えた生物体はすぐに大きくなってまた子をばらまき,増えて増えて増えまくって,人々の抵抗も虚しくやがて大地はヤツらに覆いつくされて文明は滅亡するのです。ほとんどホラーパニック映画。「クローバーフィールド」って映画を思い出したぜ。

 

 私,悪乗りしてますね。そうです厄介な敵ですが,じつは調べるほどに興味深い生物なんです。


 例えばこのコニシキソウ回路という特殊な光合成装置を持っています。これは高温で乾燥した条件の下で,太陽が当たれば当たるほど無限の光合成ができるという魔法のようなシステム。まさに日陰の少ない庭や畑にうってつけの能力です。

 

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 さて,我が庭での様子。この駐車場のコンクリの目地にはジャノヒゲが植えてあるのですが……。

 

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 こんな感じ。うまいこと隙間に入り込みよって。

 

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 タイルの隙間。

 

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 オダマキの花壇に。

 

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 オランダイチゴの畑に。

 

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 開花中を拡大。写っている幅は10ミリほど。意外や,美しいと思いませんか? この赤と緑のコントラストの美しさから「錦草」の名が。昔の人は良く見てますね。ヒトがファッションで着こなすには難しい配色ですが,さらりと身に着けています。どれが一個の花かわかりますか? トウダイグサ科の花は異形と言えるほどに特殊で,いくつかの雄花と雌花が一つになって杯状花序という一つの花のような構造を持ってます。これが繁栄のカギか。

 

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 全長2.5ミリのアミメアリが来ています。なんとコニシキソウの受粉昆虫はアリ。蜜を出す「腺体」に引き寄せられて花粉を体に付けられ,めしべへと運びます。小さなアリ相手なので大きく派手な花は不要。花弁も不要。徹底してダウンサイジング,見事です。アリは種子の散布まで手伝うそうです。

 

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 花の構造。これでどうやら杯状花序のひと単位らしい。

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 拡大して気付いたこと。コニシキソウを食害する昆虫はいないと思っていたのですが,花には必ずこのアブラムシがいました。よくわからないのは,この大きさの個体しかいないこと。若齢幼虫としか思えないのですが,ひょっとしてこれで世代交代をしてる? しかも,アブラムシと言ったらふつう植物に口を刺してちゅーっと汁を吸い続けているものですが,こいつらはずっと動き回っていて,アリからも関心を示されていませんでした。何だろう?

 

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 もひとつ拡大。やっぱりアミメアリとアブラムシがいます。

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 解説付けるのが楽しくなってしまった。

 

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 傷つくと乳液を出します。これは多くのトウダイグサ科に共通する性質。葉を食害する昆虫への防御手段,のはずなのですが,そもそもコニシキソウの葉を食うような気の利いた虫を見たことない。

 

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 前述のように,抜いただけでは種子の供給源になってしまいます。焼却処分,この他に無し。


 原産地は北アメリカ。今は世界中に分布を広げ,沖縄を除く日本全国で地を覆い続けるコニシキソウですが,絶対必要な生育条件があります。渓流を駆けるイワナに清い水が必要なように。それが,他の植物が生えない裸地,ひたすら陽光が当たる場所であること。アメリカの乾燥地帯ならいざ知らず,森の国・日本の自然にそんな場所はありません。人間が切り開いた土地,すなわち庭,畑,道。人の活動の傍らでしか生きられない。無敵の生きもののように書いてますが,本当は生きられる環境の限られた,ほかの多くの生物と同じ儚い存在なのです。ただそれがたまたま,この世界を改変するまでの力を持った絶対支配者・ヒトの生活環境と一致したということ。雑草とはつまりそういう者たちへの蔑称なのです。

 

 「雑草」の逸話を一つ。


「どうして庭を刈ったのかね」とのお叱り。
「雑草が生い茂ってまいりましたので……」とお答えしたところ,
「雑草ということはない。どんな植物でも,みな名前があって,それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草としてきめつけてしまうのはいけない。注意するように」と諭されたのでした。
   入江相政昭和天皇侍従長(雑誌のインタビュー記事より)


 昭和天皇のお言葉として有名です。同感。もっとも,侍従たちが「雑草」と呼び陛下からお叱りを受けたのはもともと吹上御所にあったワレモコウやオミナエシのことであって,ヒメジョオンやヒメムカシヨモギといった帰化植物は陛下みずからお抜きになったとか。現に私が庭で抜いているのもほとんど外来種コニシキソウも。

 

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 その生を賛美するのと,我が庭に存在を認めるのとは別問題なんです,はい。

 

 

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神保町のエロ本屋/接客について思うこと

 

 

 20年くらい前まで,よく東京に買い物に出ていました。


 東京がご近所というわけではありません。しかし当時の特急を使って1時間半というのは,東京近郊でいくつも各駅停車を乗り換えて都心まで,というのと大差なかったと思います。ゴメンね多摩地区。ちなみに今はもっと早く行けます。大学卒業した当初はより東京に近い土浦在住だったので,さらに気軽に行ってました。ファッションとかおしゃれな街とかに興味の無い私が,なぜ東京? それは間違いなく,東京に出なければ買えないものがあったからです。最初にビデオデッキを買ったのは秋葉原。まだ電気街だった秋葉原。そのころは地方にまだ定価売りの電器小売店しかなく,いろいろなメーカーから選んで安く買うというのは秋葉原でしかできない芸当でした。

 

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 神田神保町古書店街にもよく行ったものです。洋書の画集,読みたかった絶版の文庫本。エッチな写真集。何でもあった。1日楽しめました。


 その神保町の古本屋に,写真集専門のとんでもない店がありました。品揃えのことではありません。もはや異常としか思えない店主の性癖が爆発する店でした。


 靖国通りすずらん通りの間にあったと思います。木造平屋の暗く汚い店内には,これでもかとばかりにちょっと昔のアイドルの写真集が法外な値札と共に吊り下げられ,本棚にはグラビア雑誌がこれまたいい値段と共に全号揃いで並べられていました。話に聞く中東のバザールもかくやという品揃えです。そして本棚の足元には,週刊プレイボーイとか平凡パンチとかが平積みにされていました。○○のヌード掲載!若き日の××裸体!なんて手書きの札が付いています。でも値札は無い。これがポイント。××の若き日の裸体なんて言われたら,そりゃあ興味が沸くってもんさ。その客の様子を,番台みたいな帳場に収まった店主は横目で観察しています。ついに客がその一冊を手に取り,「すいません,これいくらですか」の「す」を言ったその瞬間!


『そこのに触んじゃねえっ! そこまだ整理してないんだよっ』


 まるで万引き現行犯を取り押さえたようなとてつもない大音声だいおんじょうでわめくのです。


 これやられたひと,手を上げてください。おそらく千人じゃきかないと思う。毎日毎日,一日何回もこれをやってストレス発散しているのです。もちろん私は初見でこれをやられ,他人がやられるのを目撃し,なにかの媒体でもこの話が載っているのを見ました。


 この店主,電話の応対も大したもので,とある写真集の在庫の問い合わせにぞんざいに応えたあと,「うちは日本全国相手に商売してんだよ」と毒づいているのを見ました。どんな接客しようが,客は向こうから頭下げてくるんだよ。実にわかりやすいカン違い小売店主でした。地上げが横行する前の,神田古書店街の黄金時代のお話です,はい。今はもうこの店ありません。


 写真集専門というと,駿河台下交差点あたりにあった店も,店主のふんぞり返りぶりは同じようなものでした。どちらの店主も,今頃は荒稼ぎしたカネで左うちわの生活しているのかな。悔しいなあ。


 これほどではないにせよ,私の地元・水戸の商店でも,なまじ商売のうまくいっている店のおかみさんはだいたい接客態度がひどい。南町の表通りの写真屋のカミさんがご近所さんと談笑していて,声を掛けても無視され続けたことがあります。自分がそんなまともじゃない人間に見えたとは思いたくないのですが。


 秋葉原アメ横も,50代以上の店員にはひどいのがいっぱいいますね。あの横柄な接客。客が向こうからいくらでもやってきやがる,ああ面倒くさいというあの態度には怒りよりも驚きが先行します。アメリカではトイザらスが潰れたそうですよ。ネット販売が盛んになって,店にはただ実物を確認する客ばかり来るようになって。


 本当に,東京あたりの個人商店でモノを売る商売している人たちに警告。これからの敵はネットです。店を続けたかったら,ネットにはない付加価値を付けましょう。最低限,丁寧な接客と笑顔を。


 実際のところ,私自身買い物目的で東京に行く機会は減りました。行くのは良いものを扱っていて,まともな接客ができる店だけ。だってネットで手に入るもん。


 私が高校生のころ,近所に驚きの文房具店がありました。表通りの潰れた店舗を借り受けて,ベニヤ板の台に鉛筆や消しゴムを並べてました。小柄で福々としたおかみさんが店番をしているのですが,私のようなただの高校生が消しゴム一個買っても,満面の笑みで腰を90度曲げて,心からの発声でありがとうございましたと言ってくれました。当たり前と思うでしょ? いえいえ,水戸の店でこんな接客をするのは天地神明にかけて他にありません。本当に驚いたものです。


 それから30年の月日が流れ,勤めが水戸になり,県庁のそばを通りかかったときです。視界の隅に,いつか見たあの店名が。ええっ? 戻ってみると,まごうかたなきあの店です。そうか,場末からこんな官庁街に進出したか。入ってみます。昔は吹きっさらしの店先でしたが今は自動ドア。いらっしゃいませーと元気よく声をあげたのは……あのおかみさんでした。30年経っても変わらず福々として。どこかにしまいこんで忘れていた宝物を見つけ出したようで,胸がいっぱいになりました。聞けば商売は息子さんの代に移ってましたが,店番はお嫁さんと交代でやっているようです。息子さんは親の姿を見ています。きっとDNAは正しく受け継がれ,商売は続いていくでしょう。応援してます。

 


 まっとうな商売人に祝福を。ナメた商売人に鉄槌を。お客様は神様だなどと心得違いをしているわけではないんです。私は基本的に店員さんとは敬語で接しますし,コンビニで馴染みのバイトさんから商品を受け取るときには頭を下げます。互いに対等な大人。なぜそれがわからぬか。

 

 

 

 

 

参考記事

死なずのバッグをてにいれた - ジノ。

アメ横のナイフ屋の話 【恨み節です閲覧注意】 - ジノ。

今日も負けた - ジノ。

 

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コウノトリを見た

 

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 今日は研修。生物仲間と東大の柏キャンパスに行って講義を聞いてきました。


 面白かったのはこの先生。

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 大気海洋研究所とやらに所属。たまにテレビにも出ているそうです。ウミガメの背中にビデオカメラを付けてウミガメビューの動画を撮るという,ものすごく面白い研究をしている方です。お話も上手で,東大にもこんなオリジナリティのある研究者がいたんだと感心したら,学部は京都大の水産学部だったとか。


 いえいえ,おかしな先入観はいけません。確かに東大の先生には諸悪の根源としか言いようのない方々もおられます。しかしこの研究所のパンフレットを拝見したら,写っている東大のフィールド系の先生たちが皆とてもいい笑顔なのに驚きます。私が野で出会う方々と同じ顔。フィールドに求めるものがある研究者独特の,一種の幸福感に満ちたお顔です。この一点だけでも,理系のフィールド屋ほどステキな商売はないと思う。


 さて,こんなところに東大があったんだという驚きの柏キャンパスを後にして,隣の野田市にある「こうのとりの里」に向かいます。こんなところにコウノトリがいるんだ,とまた驚きです。どうしても私の世代にはアレは絶滅したものというイメージがあるので。

 

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 着いて早々,4羽がまとまって田んぼにいました。これがここにいるコウノトリのすべてです。そのうちエサ取りに歩きだす者が。

 

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 絶滅,という頭があるものですから,それが目の前をのっそりのっそり歩いているのはいささか現実離れした光景です。

 

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 こんな大物にもカラスはちょっかいを出すのですが,すぐに追っ払われました。直後には羽毛を逆立てて興奮気味。

 

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 おお,電柱の上にコウノトリ。絵に描いたような。

 

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     伊藤若冲旭日松鶴図

 掛け軸によくある松の木の上にツルが乗っている画題は,じつはコウノトリを誤認したもの。ツルは木の上に止まったりしません。

 

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 兄弟,ということでした,この2羽。

 

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 アオサギ先輩,あえて近づきます。ふだん水辺で無敵の先輩ですが,コウノトリ大先輩の前では劣勢。コウノトリはデカいだけではなくかなり攻撃的で,この大きなクチバシで恐怖の打突攻撃を仕掛けてきます。私,動物園のコウノトリに金網越しに連続打突をかけられてかなりビビった覚えがあります。実際にオス同士の争いでこれを使い,相手を死に至らしめることもあるとか。この大きさとこのリーチは脅威です。

 

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 余裕たっぷり,大先輩。

 

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 保護施設では飼育係の方のお話も聞けて,まあ有意義な見学となりました。

 

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 大きな鳥ですねえ。

 

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 鳥って恐竜だよね。特にウロコに囲まれたあの無表情な目。どうしても私が鳥を好きになれない部分です。

 

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 それにしても千葉にコウノトリ? なんの脈絡もないでしょ。福井県武生市とか兵庫県豊岡市とか,最後の野生群がいた場所ならともかく。


 ここでいうコウノトリは,西洋で赤ちゃんを運んでくるというアレとは別種の,東アジアのコウノトリです。中国からロシア沿海州にかけての広い地域に分布し,渡りをするものしないもの,越冬地に居ついて繁殖するものなど,決して固定されていません。しかし日本本土に留まり繁殖していた個体群は,1971年に最後の一羽が保護のために捕獲されて野生絶滅し,飼育されていた個体も死に絶えました。いま日本で飼育あるいは放鳥されているもの,多くの人々がその保護に取り組んでいるものは,中国から導入されたコウノトリです。ホタルやメダカで同じことをやったらどうなるでしょう。今どきなら間違いなく非難されます。それ日本のDNA持ってないじゃん,と。

 

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 わざわざニホンコウノトリと表記してありました。こんな正式和名ありません。大陸にいるのも日本本土にいたのも,種類としては同一の「コウノトリ」。もし日本本土にいた地域個体群をあえて勝手に「ニホン」と呼ぶにしても,もう絶滅してます。いま日本の空を飛んでいる100羽はすべて大陸から来たものとその子孫,それをニホンと呼びますか。今でも自然に大陸から日本に渡ってくる個体があるそうなので,それをニホンコウノトリ,それなら大陸のもニホンだろう,という強弁ですか。何か,オレの国の大陸棚にあるものはすべてオレのものと言い張る某愚国を思わせます。こんな一事で,本来はとても純粋で意味のあるこの事業全体がうさん臭く見えてしまいます。


 誤解なさいませんように。今現在日本全国で行われているコウノトリの保護・増殖事業にケチをつけているわけではありません。「外来のコウノトリでも定着して繁殖を継続できるような,かつての豊かで安全な水辺の自然環境を再生させよう」という意味合いなら,大いに共感できます。環境改変,水銀汚染,狩猟などの人的要因が複合的に作用して絶滅したコウノトリ。そのコウノトリがまた住める環境を作り出そうというのは,近視眼的になりがちな自然保護運動の中では随分と視野の広い,深い取り組みを必要とする事業です。事業そのものの象徴としても,コウノトリは適任です。ただそのコウノトリの位置づけや一般への説明については,生物学的に厳密にやっていただきたいと。生物屋に違和感を持たれるようではその成否は微妙です。

 

 

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 今回のタイトル,「ウルトラQ」の一篇のパロディのつもりだったのですが,これまた微妙でしたね。元ネタ誰も知らないって。

 

 

 

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