ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ざくろ沢ガサ入れもといパンニング制覇

 

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 最近,川を見るとガサ入れしたくなる。病気が高じてきました。いかんこのままでは人としてダメになる。


 いつの間にかパンニングをガサ入れと称するようになっていたことにも気付いてません。生物屋が,野山に被写体があふれるこの季節に長靴履いて沢でごそごそやってます。とにかくこの道を突き詰めて,憑き物を落とすしかない。それにはともかく,かの「ざくろ沢」を制覇するしかありません。


 ♪ ばーんだのさくらか えーりのいろーっ

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 気分が前のめりの時に口を衝いて出る旧軍軍歌「歩兵の本領」とともに,やってきましたざくろ沢。実は4度目,今日こそキメます。

 


 目的は一つ。ざくろ石の採れるポイントを特定できること。ついでに磁鉄鉱結晶のポイントも。

 


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 道々,落ちている石を見ます。これは結晶片岩のうち,鉄を多く含むもの。磁鉄鉱の母岩でしょう。


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 こちらはざくろ石の母岩。なるほど,きれいな結晶は難しそうです。

 

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 しばらく歩きました。ここらで沢に降りてみよう。


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 上流からパンニングしながら沢を歩いて,たどり着いたのがこの地点。何の変哲もない沢でしたが……


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 川砂を取ってガッシュガッシュしてみたら


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 当たった! ようやくポイントを見つけました。見た目にもはっきり赤い粒。磁鉄鉱の結晶も見えます。


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 何かの目的のために,自分しか知らない場所を持つこと。自信をもって,求めるひとを案内できる場所を持つこと。これで「パンニングでざくろ石」には余裕で対処できます。自家薬籠中の物が増えました。ナチュラリストの宝物です。


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 持ち帰った砂をピンセットで選別。出るわ出るわ赤いやつ。机の周りが砂だらけになったけど,これだけ採れました。


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 色も形も千差万別です。


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 ちゃんとラミたんもいます。もとい磁鉄鉱の結晶も。


「パンニング ざくろ石」で画像検索すると,日本各地の川で採れたざくろ石を見ることができます。中にはざくろ石が大量すぎてパンニング前から川砂が赤い川だとか,鮮やかな赤い色のざくろ石ばかりが採れる川だとか。羨ましいけど,私には自分の足で見つけたこの場所こそざくろ石の沢です。

 

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 地質図の「ざくろ石帯」は広域変成岩のある地域限定ですが,ざくろ石自体は安山岩のような火山岩にも見られます。火山地帯にお住まいの方々も,百円ショップで道具を揃えてご近所の川で試してみてはいかがでしょうか。楽しいですよ,パンニングで宝さがし。

 

 これで何とか憑き物は落ちました。おデコにざくろざくろざくろ石と表示されなくなりました。次の週末は生物写真を撮りに行こうかな。

 


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 ざくろ沢からの帰り道,東海村方向に黒煙が見えました。原子力施設と重なって見えたので,てっきり東海第2原発で何かがあったと思いました。


 ついにこの日が


とか言ってみたり。 すぐに煙は収まって,どうやらただの火事だったようです。 …… そして人生は続きます。さながら螺旋のように。

 

 

 

↓ ガサ入れ関連記事です

パンニングで鉱物採取 砂鉄,角閃石,ざくろ石 - ジノ。

ざくろ石ざくざく - ジノ。

パンニング,ざくろ石と磁鉄鉱 - ジノ。

 

 

 

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青麻山(茨城県の)

 

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 青麻山あおそやま。ネットで検索すると宮城県にあるお山がヒットします。ハイキングで人気の山らしい。でも今日向かうのは茨城県常陸大宮市に在する方のお山です。標高395メートル。


 あおそ,というのはイラクサ科のカラムシという植物の別名。繊維を取る目的で明治以前は盛んに栽培されたそうです。その青麻がいっぱい生えていた山なのでしょうか。県北部の,奥深いところに鎮座しています。国土地理院の地図には頂上に神社が示されてます。


 御岩神社鶏足山鍋足山奥久慈男体山…… 好きだったフィールド,深呼吸するため,心を養うためにあった領域に,次々と人が押し寄せるようになりました。集団で行動したがるタイプの方々とはどうも相容れません。神気ただよい樹声ささやく,せめて単独行の人に出会うだけの山はないものか。もちろん生物が多様であることもポイントです。


 そんな経緯で古い生物調査の報告書を見ていたら,青麻山の名前がありました。どこそれ知らない。そうか自然観察のできる山かと目星をつけました。行かねば。


 水戸を出て1時間。まずは地形図で二つあるうちの南側の登山路を目指します。


 上の方まで舗装された車道のようですが,用心して登り口に駐車して行動開始。


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 クサイチゴやらミツバウツギやらサワガニやら。


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 さあところが。舗装が切れた途端に道がヤブに消えました。え?え?だって地形図には。…… 国土地理院のド嘘つきが。


 登っていけばいつかは山頂に着くのだろうし,ヤブ漕ぎ大好きって人も世の中にはいるけれど,フルパワーが必要です。今日はそんな気分じゃありません。そもそも何度でも安心して来られる場所ってのが肝要なんです。


 なんて思いながらヤブをかき分けていたら,なんとエンレイソウ

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 このあたりのこの標高では珍しいものです。ここで見たというだけで収穫。これを潮に転進します。この道はない。最近の国土地理院は現地踏査などしないのでしょうか,山道で往々にしてこういうことがあります。


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 で,西側の登山口に回ったらこれ。今はもっぱらこちらがルートのようです。


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 地形図では「徒歩道」,つまり歩行者用のホントの登山道のはずなのですが。国土地理院,最近は航空写真のトレースすらやっていないようです。


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 とにかくスギの造林地で,下草も刈られて,よく管理されています。ということは生物相は単調です。残念ながら生物観察には向いてないでしょう。


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 丁寧で親切なご案内、痛み入ります。私の車はとりあえず四駆なのですが乗用車タイプだし,ここでも用心して徒歩で行くことにします。山では用心深いに越したことはない。そのほうが観察できるし。


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 ミミガタテンナンショウ。今年はよく見かけました。


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 かなりの急坂で,油断すると息を切らします。


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 着いた。心づくしのご案内,ありがとうございます。


f:id:xjino:20190525090726j:plain 青麻三光神社

 

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 月,日,星の三光のシンボルは,東北の山でも見かけました。…… この微妙な手作り感がいいですね。小さな神社ですがよくお祀りされてます。


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 社殿の裏に回ると


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 伐採地。南東方向の限られた眺望より,伐採後の山肌に目が行きます。本当に植林地帯なんだ。


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 斜面はものすごく急傾斜。あのままヤブ漕ぎしていたらこんなところを登る羽目になったかと思うとぞっとします。

 

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 境内に戻ってフモトスミレチゴユリ。まあともかく,思い描いていた私の自然観察地とはだいぶ違いました。いえこの神社やお山そのものにケチをつけるわけではありません。ただ偏屈で口うるさい生物屋の眼には留まらなかったと。


日本百名山」の深田久弥は,百の山を決めるのにどれだけの山を登ったのだろう。「百名山」刊行後も山を歩き続け,そして山で生涯を終えました。そんな,求道に捧げたような人生をうらやましく思います。…… 今の世には、ただ他人の後を辿るだけ,ネットで人気の何かを探して、真似をしただけなのに〇〇制覇なんて言ってみたり、そんな人が溢れています。深田久弥はかような行為にはなんの価値も感じなかったろうし,私も興味はありません。目指すのは、限られた人生のうちに、自分にしかたどりつけない場所に立つこと。

 

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 下界は田植えの真っ最中,ヤマフジショカツサイが花盛りの頃の話です。

 

 

 

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初メロン食べました

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 家族が鹿島スタジアムのアントラーズの試合を見に行ったついでに,鉾田メロンを買ってきてくれました。今年の初メロンです。

 

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 濃厚,芳醇。香りも甘みも上品かつ強烈。普及種のアンデスメロンにしてこの実力です。お値段もさすが生産地,東京の人が聞いたらひっくり返るくらいリーズナブル。

 

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 茨城で作れぬ作物はない。さすがにパパイア作ってるのには驚いたけど,本当に何でもできるんです。常陸の国は常世の国。古代から人々が豊かに暮らすこの国の,季節の移ろいがまた一つ。いえ,古代にメロンはなかったけど。

 

 

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パンニング,ざくろ石と磁鉄鉱

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 さあ,今日はざくろ石の十二面体結晶いくぞ。


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 以前,本当の偶然でパンニングにざくろ石の結晶が入ってきて歓喜しました。なんと美しい。この美しさをあえて表現するなら,ランダム性と規則性の絶妙な配合,定型でありながら同じものが二つとしてないこの唯一無二感。同じ衣装を着ながらそれぞれに個性を競う集団アイドルみたいなものでしょうか。小さく美しく,同じに見えて個性的,そんなざくろ石が小びん一つにびっしりと詰まっていたら見ものだろうな,ちょっとした宝物だよな,魔法アイテムにもなりそうだな(笑)なんて。


 前回,あ,前回というのはこの前の鉱物ネタの回ということですが,「ざくろ」(ジノ。命名)でざくろ石をたくさん採ったご報告をしました。地質図で近所に「ざくろ石・菫青石帯」というのを見つけて大喜び,勇んでパンニングしに行った話です。


 結局この時には結晶が採れなくて,もっと上流なら砕けていない美しいのが採れたのにと,ずっとずっと悔やんでおりました。今回は現地の地質図をプリントして,よさげなポイントをもうチェックしてあります。そう今日はリベンジ回なのだ。


 さっそくコケました。道筋を写真レポートしようと思ってたら,持ってきたカメラが電池切れのままでした。万能の「権三さん」も電気が無ければ動けない。ガッデムウウウというか,なんとも初歩的なミス。だいたい幸先悪いフィールド行は目的を達せないのが私のジンクスです。わはは,今日はダメなんだろうな。

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     権三さん,今回はごめんね。

 案の定。何回もやぶ漕ぎして沢まで降りてパンニングするのですが,さっぱりざくろ石が出ない。ざくろ石帯と言ってもどこにでもざくろ石がある訳ではないことを知りました。このあたりの山は「結晶片岩」という変成岩で,ざくろ石はその中に層状に産するようです。

 


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 結局1か所で,大きめのものが採れただけです。しかも不定形なものばかり。

 

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     それなりにキレイではあります。

 

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         異星探検ふうに。


 たぶんこの沢の母岩には,十二面体結晶では含まれてないのでしょう。半日かけてそれが知れたことが成果です。とりあえず採れるポイントはわかったし。


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 パンニングで取れた砂をかなり持ってきたのですが,思ったほどざくろ石が含まれていなかったことにもがっかりです。せめて量だけはと思っていたのですが。上が今回,下が前回の戦果。前回は1時間程度でこれだけ採れたのにー。思えば前回はつまり,いきなり行って適当に沢に降りたにもかかわらず見事ポイントを当てていたのですね。ビギナーズラック。私は新ネタでフィールドに出るとよくこれに恵まれます。冬虫夏草の時も,久慈川メノウの時も。2回目以降で苦労したりして。何か変な見込まれ方をしているようです。

 ↓ 前回はこんなでした

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 ところで。


 これは帰宅して選別する以前,すでに現地で気づいていたのですが。パンニングで残った砂の中に,青光りする妙な結晶がある。


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 これ! 正八面体!

 

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 あるわあるわ,ざくろ石よりたくさん取れてます。しかも見事な結晶ばかり。


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 調べてみると,これが磁鉄鉱。鉄の鉱石,磁鉄鉱結晶片岩によく含まれるものだそうです。もろく砕けやすく,すぐ砂鉄になってしまいます。だからこれがあるということは,すぐそばにこの結晶がびっちり付いた母岩があったということ。おおこれもガッデム。見たかったなあ。


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 それにしてもこのカタチ。エヴァンゲリオンに出てきたアレですよね。シパーッ!とビーム砲撃ってくるヤツ。


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 これだけの数で来たらば,ヤシマ作戦実施不可能だったような。


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 手乗りラミたん。


 美しさという点ではざくろ石に負けるけど,これはこれで小びんにびっしり詰めたくなる風情があります。また行こうか,ざくろ沢。

 


 読者の皆様,私の記事を見て新たにパンニングに興味を持った方はおられますか? いやなに,決して難しいものではないのです。道具も百円ショップでほぼ揃うし。文字通り宝探しだし。夏だと虫よけが必要なことと,人に見られた時の言い訳が面倒くさいだけです(笑)

 


 もし興味がおありなら,一つ参考になるものをお伝えします。産総研(産業総合研究所)の地質図ナビ。産総研のHPから,日本全国の地質図が閲覧できます。もちろんタダで。私のような者には最高の暇つぶしにもなります。たとえば四国にお住まいの方,四国を東西に横切る中央構造線沿いには広大な「ざくろ石帯」がありますよ。現地がどのような場所か存じ上げませんが,私なら狂喜乱舞ですね。現地を歩きながら見るには大ざっぱな図ではあります。でも使いようによっては今回の私のように存分に楽しめます。あくまでも自然を「楽しめる」ひと限定でどうぞ。

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f:id:xjino:20190519153758p:plain 四国あたり



↓ 参考記事です
パンニングで鉱物採取 砂鉄,角閃石,ざくろ石 - ジノ。
ざくろ石ざくざく - ジノ。
冬虫夏草探索記 茨城で不思議なものを探し歩いた日々の記録 - ジノ。

ざくろ沢ガサ入れもといパンニング制覇 - ジノ。

 

 

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中禅寺湖のフジスミレ

 

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 奥日光に,もう何十回行ったことでしょう。


 ああ,あちらに別荘があるなんて上級国民ではありませんよ。


 昔,父の勤務先の保養所が奥日光のまた奥,湯元にありまして,小学校の時から何度か連れて行ってもらいました。長じて高校生の時には,蝶採り仲間と菖蒲ヶ浜のバンガローに泊まりながら採集に明け暮れました。移動手段に車を得てからは,渋滞を避けて真夜中に出発し,明け方から戦場ヶ原や奥白根山を歩き回りました。人が多い場所は大嫌いのはずなのに,こんな風に時間差で動きながら日光に通いました。


 私のナチュラリストとしてのキャリアから人格形成に至るまで,いろは坂の上に広がる冷涼な異世界は,絶対的な位置づけで私の胸の内にあるのです。


 で。


 十年前のGWのころ,たまたま中禅寺湖畔を歩いていて,見慣れぬスミレを見つけました。かつて仏人ガロアが世にも珍しい昆虫を発見し,世界中から昆虫学者が殺到したあたりです。小柄で上品ななりわいのスミレでしたが,当時は今ほど知識がなく,ただデジタルカメラに姿を収めました。そして私が「大災害」と呼ぶ,ハードディスクがぶっ飛んだその日に,あのスミレのデータも失われてしまいました。


 ものを知らない,知識がないというのは悲しいものです。あとから気づきました。あれは日光特産のスミレ「フジスミレ」ではなかったかと。この三千世界でただ一か所,栃木県日光でしか見られないスミレだと。 …… 以来,GWに日光へ行ってあのスミレに再会することがフィールド目標の一つになりました。でも年を経るごとにGWの連休は好きに使えなくなっていき,日光まで足を伸ばす間がありません。それにGWの日光なんて,好き好んで渋滞にハマりに行くようなものです。渋滞大嫌いの私が二の足を踏むのもご理解いただけますでしょうか。


 しかし今年は。


 今年も,500人の聴衆相手の講演をやりました。10連休の2日間をパワーポイントのスライド作り(サービス出勤)で潰し,講演は大盛況でしたが疲れ切りました。いかんこのままでは心のバランスが。昨年はウスバサイシンを見るくらいで収まりましたが,今年はキツいです。もっと腹に来るイベントでないと頭が切り替えられない。


 …… 日光へ行こう。行くしかない。GWを一週間過ぎて,フジスミレがまだ咲いているかどうか知れませんが,とにかく行こう。


 朝3時起き。4時過ぎには家を出てまだ暗い水戸の街を抜け,栃木の最奥を,奥日光を目指します。空はどんよりしてますが,まあたぶん晴れます。


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 ずんずん近づく男体山。ほら晴れた。


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 着いたー! 見よ男体山


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 奥白根山も湖面に映り。


 ここから湖畔周回遊歩道を歩いていきます。


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 どこでも会うぞタチツボスミレ


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 たぶん歩くことただそれだけが目的の人には気づかれないでしょう。ハナネコノメの微細な花が遊歩道を彩ります。


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 ヤマエンゴサクの不思議な造形。


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 ヒメイチゲ。日本で一番小さなアネモネ

 

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 微細な花に気付かない山歩きの人々もさすがにケータイカメラを向けていました。アカヤシオの花。まだ冬枯れの日光の森で,ひときわ生命の色彩を放ってます。


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 道沿いの森。なんというか,ケモノ臭え森だなあというのが第一の感想です。シカに下草を食い尽くされて,ぷんと獣臭が漂います。しかしおかげで地面まで光が届き,小柄な植物には良い環境になっています。そこに。


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 ありました。まごうことなきフジスミレです。とうとう会えました。


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 日本特産どころじゃありません。本当に,日光周辺にしかないんです。近縁のヒナスミレよりなお小柄で,一般の方にはまず気づかれないでしょう。むしろそれがこの花には重畳。フジスミレ目指してどっと人が押し寄せたら,逆に危機です。いやーキレイねーほんと来て良かったわーとか言いながら目的の花を踏み潰すような方々に知られないことが自然保護。皮肉なものです。


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  そこにしかないものを見る。そこにしかない空気を感じる。事物はひとそれぞれでも,旅の目的は同じです。今回の私はフジスミレがその目的でしたが,それ以上にこの行動,移動そのものが意味を持ってました。おかげさまでリフレッシュ完了。また明日から戦ってまいります。


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 皆様もどうかお健やかに。

 

↓ 関連記事です。ご参考に。

 

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カナン5100年

 

 母の本棚を整理していて…… あ,死んだわけじゃないですよ。その母の本棚を片づけていたら,懐かしい本が出てきました。


 光瀬龍「カナン5100年」(1979,ハヤカワ文庫)
    「辺境5320年」(同)
    「たそがれに還る」(同)


 うわあ,脳が震える光瀬龍といっても若い人はイメージが湧かないだろうとは思います。昭和に一時代を築いたSF作家のひとりで,数多くの壮大な物語やジュヴェナイル作品を生み出し,その抒情的な作風から「SFの吟遊詩人」と呼ばれました。「夕ばえ作戦」は十年ほど前に漫画化されたので,それでご存じの方もいるかな。


 当時の私は特に「年代記」シリーズが好きでした。遠い遠い未来で,今の私たちと同じように悩み苦しむ人々に感情移入していました。イラストなど一切なく表紙も抽象画であった当時の文庫本です。かえって想像力を刺激され,思うがままに作品世界をイメージしていました。間違いなく,今の私の人格形成にも大きな影響をくれた作家です。本を失くしたと思っていたのですが,母の本棚にあった。母が光瀬龍なんか読むわけないから,たぶん妹が持ち出してそのままになったのでしょう。宝物を掘り出しました。


 それに比べて最近の小説ときたら…… なんて始まってしまうのが私の年代の役どころでしょうが,やめときます。どんな作品が書かれてどんな作品が売れるのか,その責任はその時代にありますから。それも含めて,とにかく私は若い人たちに読書を薦めています。若いときに読んだ本は,一生その人に残りますから。


 光瀬龍の作品,もちろん私はいくつものフレーズを憶えています。それ以上に,いくつもの情景を頭に描くことができます。異星語を解読するコンピューターの無機質な声とか,ゆっくりと音もなく火星の大地に墜落するロートダインとか。中でも心に残るのは,表題作「カナン5100年」の,過酷な異星開拓を任された隊員たちの悲惨な末路と,それを象徴する作家のひと言です。

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 カナンの地はオリーブの咲くときのみ,カナンであった。

 


 願わくば,いまの若い人たちがそれぞれに,一生残る言葉に出会えますように。

 

 

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ざくろ石ざくざく

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 いかん。何がいけないと言って,駄ジャレタイトルだけはいけない。でも他に思いつかないので押し通す。


 地質図というのがありまして,これが見始まると止まらない。特に古い地層が複雑に絡み合った阿武隈山地南部,日立あたりが面白くてしょうがない。ご存じでした?日本最古のカンブリア紀の地層があるのが日立だって。むかしそれを見に行った写真があるので,そのうち記事にしますね。


 でも今日は。


 阿武隈山地は遠く宮城県に始まっておよそ170km続き,ここ日立で関東平野に没します。その没するあたりの地質図を見ていたら,「ざくろ石・菫青石帯」というのを見つけて小躍りしました。おお,ざくろ石。私の好きな石です。以前の記事(パンニングで鉱物採取 砂鉄,角閃石,ざくろ石 - ジノ。)では偶然にパンニング皿に入ってきたのですが,これは狙って行けるかな? で「この連休に行きたいところ」リストに入れておいたのだ。


 もちろんセンチサイズのものは期待しません。1ミリ以下の鉱物結晶に過ぎないのでしょうが,ちょっと集めて見てみたい。ちなみに菫青石の方は,名前には魅せられますが難しい石なので今回は無し。


 幸い「ざくろ石帯」を横切る沢が土地勘のある場所だったので迷わず行けました。長靴履いて沢に降り,パンニング皿(実は植木鉢皿)に川底の砂を入れてガッシュガッシュ

 

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 微小なざくろ石も含むので現場ではどうしようもありません。皿に残った砂を持ち帰って,家でじっくり選別します。宝さがしです。


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 ピンセットでよっと。


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 採れた採れた。


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 一番大きいのはかろうじて1ミリを超えますが,まあ本当に微小なのばかり。でもキレイです。


 気付いたのは,あのざくろ石をざくろ石たらしめている結晶構造がない。完璧な十二面体結晶は無理としても,せめて結晶面がいくつかあれば満足なのですが,なぜかみな削れている。かなり硬い鉱物のはずなのですが。


 たぶん,露頭(母岩が露出しているところ)から採集地まで距離があったのでしょう。もっと上流で採れば。また来る理由ができました。



 ではメインイベント,拡大。

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 ああキレイ。

 

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 これ。この写真が撮りたかったのだ。

 

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 絶景は身近にいくらでもあるものなんですね。

 

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