ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

アメ横のナイフ屋の話

 

 クサボケの実,今年も薬酒にしました。

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 輪切りにして,タネを取り出して。

 

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 でも今日はクサボケの話ではありません。このナイフのお話です。もう20年来使っている愛用のナイフです。

 

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 ナイフはいくつか持ってます。用途に合わせて使い分け,使ったら大事に研いで次に備えます。魚をさばく。獣皮を切る。木を穿つ。鋭い爪も牙も持たぬ人間にとって,生きる上で最も基本の道具です。研いで使って,少しずつ少しずつ手に馴染ませながら。私はそうして刃物と付き合ってきました。


 昔C.W.ニコルさんが若い人達と対談した時,「刃物は野蛮で危険なものだから私は使わないで暮らす。魚も肉も切ってあるものを買えばいい」と発言してニコルさんを激怒させた女性がいたそうです。


 バカな女だ,とニコルさんは吐き捨てますが,まあその気持ちはわかります。自然をそして人間を相手に生きるか死ぬかの戦いを切り抜けてきたニコルさんにとって,こんな都会に寄生するしか生きるすべを持たぬ人間など許し難いものだったのでしょう。


 さて私のナイフたち,実はその多くを同じ店で入手しています。アメ横にあるモデルガンとナイフの店です。きっと名を言えば多くの方がああと言うだろうと。


 アメ横ガード下の店としてはやや広め。店内のガラスケースにはモデルガンとナイフ,軍隊用ライト,ゴーグル,ウイスキーを入れてぐびっとやるための金属ボトルなんてのも置いていたかな。要するに男の子の夢を詰め込んだような店でした。


 店員は基本的に中年の男性。不敵な目つき,横柄な口ぶり,意地でも客には頭を下げないぞという態度。およそ客商売とは思えない,でもアメ横ではスタンダードという,考えてみると特異な人たちでした。いちどエアガンの客がやってはいけないという空撃ちをして,その客を口汚く罵っているのに遭遇しました。まあ驚きませんアメ横では。N商店という軍装品で有名な店では,若い店員にはまともな人もいるのですが,年配の店員には品物を見ている客に肩をぶつけてくるのもいたりして,ここは戦後の闇市そのままの異世界なのです。実物を見られる,手に取れるというメリットがなければ行かない方がいい異界のバザール,と考えましょう。


 いかんいかん,怒りにキーボードが燃える。以前の記事とも重複するのでここは抑えよう。


 さて昨年の1月。上京してアメ横に寄った私は,異様なシャッターを見ました。そうあのモデルガンとナイフの店です。閉じられたシャッターが,ご覧の通りになっていました。

 

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 だいたいのところは理解しました。社長さんがはいこれにて当社は解散って言ったのね。突然だったのね。で戦っているのね。別に同情はしません。あの接客を見てるから。


 で,6月に行ったら営業してました。モデルガン・エアガン専門店になってました。看板は昔の店名で。でも大体のところは想像できました。


 意地悪だとは思ったけど,聞いてみました。


「もうナイフとかは扱わないんですか?」


 あいすみません,実は経営者が変わりまして,当店はこのような形で営業しております。ここにはナイフの類は置いてませんが,この先上野駅寄りの系列店で扱っておりますのでよろしければご利用ください。


 なんて笑顔で言うと思った? いいえ。私が言い終わるかどうかというタイミングで

「あ,あれは別の店だからっ」

と吐き捨てるようなお答えが返ってきました。はい,期待値の五割増しくらいのご回答,ありがとうございます。名の知れた旧店名の看板を外さないのはズルいし矛盾してますよ,と言っときます。


 また一つ,行きたい場所がなくなりました。櫛の歯が抜けるようです。

 


 以下の記事と併せてお読みいただくと,より趣きが深いかと。

今日も負けた - ジノ。

神保町のエロ本屋/接客について思うこと - ジノ。

死なずのバッグをてにいれた - ジノ。

クサボケの薬酒 - ジノ。

 

 

 

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