今年のクチナシ。やはりオオスカシバに食われては退治し,また産卵されて食われては退治し,また産卵されて,のイタチごっこでしたが,まさか11月になってもこれが続くとは思いませんでした。気温が高いとはこういうことか。ビバ温暖化。
しかし今年のクチナシはさらなる災いに打ちのめされました。そう,前回の記事でも言及したアイツ。ほらこの枝のぶつぶつぶつ。
ルビーロウカイガラムシだあ!
インド原産の大害虫,年平均気温14℃以上で繁殖。水戸の平均気温は13.6℃でギリギリのはずなのですが,近年の高温で定着したようです。
昨年も退治したのですが目こぼしがあったらしい。その生き残りがこの夏の暑さで大繁殖。天敵がいなければ昆虫はすぐ幾何級数的に増える。たぶん分布北限のこの辺りではまだ天敵の寄生バチがいないのでしょう。写真に写っているうち,鮮やかなルビー色が今年のメス成虫。黒ずんでいるのが去年の成虫の残骸。生きて冬を越したのちルビー色の殻の中に産卵して1年に及ぶ一生を終えると,殻はそのまま無数の卵を守るドームとなります。ああ,これを見逃してしまったか。
元・雌個体にして卵ドーム
母のドームをぞろぞろと這いだした仔虫はぎちぎちと周辺の枝を埋め尽くしていきます。枝にびっしりと付いて師管の汁をちゅうちゅう吸って木を弱らせます。あわれクチナシは葉を食われ汁を吸われもうヒーヒー。夏に気付いてやれれば良かったのですが,オオスカシバは秋に来るので油断してました。そういや今年は花数が少なかったなあ。9月に気付いたけどその時は私が腹の不調で行動を制約されて。復調してようやく先日,ピンセットで全部掻き取りました。防御物質に包まれて農薬の効きが悪いカイガラムシは,範囲の狭いうちはこれが最適の退治法です。
いっぱい取れた。さあどうしてくれよう。ちなみにこいつら,ピクリとも動けません。まな板の鯉とはこのことよ,うふふふふふ。
で思いついたのが,これでロウソク作れないかということ。この赤いのロウだよな,と考えていたらふと。一瞬「ユダヤ人の石鹸」という言葉がよぎりましたが,実際に会津ではカイガラムシのロウソクを特産にしていた時代があったとのこと。よしやってみよう。見ててくださいでんじろう先生!
というわけでしばし乾燥させたカイガラムシ。こんなもんかな。
百円ショップの網に乗せて,下にアルミ皿をあてがい
バーナーで炙ります。
うわははは,見ろ! 虫がアメのようだぁ!
すみません,また何かに憑依されました。
とバカ言ってるうちにロウは溶けて下のアルミ皿に。
残骸には火がついてしまったり。
ああこれが生き物だったとは。
で,ロウです。あまりにも雑なやり方で,不純物が多いのか色は汚くなってしまった。
タコ糸製の芯,セット完了です。
隣の青メノウコースターは緊急消火用。炎上したらパとかぶせます。
点火!
お?
おおおおお。不純物のせいでススがひどいけど,ちゃんとローソクになってしまいました。こりゃびっくり。
遠くインドから渡来した害虫は,東洋の片隅でロウにされて燃やされましたとさ。
このルビーロウカイガラムシ,かつてはミカン畑の大害虫でした。原産地で天敵を探しても見つからず,農薬も効かず。ところが日本で天敵の寄生バチが見つかり,これを播種することで被害は激減,このカイガラムシが問題になることは無くなりました。不思議なのは,この寄生バチが原産地には存在せず,また日本でもある日突然現れたという感じなことです。一体どこから?
生物は時に人智を超えます。そもそも人間は自分のことさえ知りません。人間も含め,本当に生物って面白いですね。
参考記事