ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

海辺のメノウは潮騒に色づく /久慈川の黒メノウ

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 潮騒を聞き続けて,メノウは色合いを変えていきます。


 今日は朝7時に勝田駅まで人を送る仕事があって,そのあと10時からひたち海浜公園で茨城生物の会の観察会です。海方面で時間差3時間。さてどう潰そうか。


 海岸でメノウを拾いましょ♪


 気になっていたことがあるんです。他の方のブログでメノウのかけらが拾える海岸があると知り,久慈川メノウも拾えないものかと波打ち際を歩いたことがありました。


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 赤メノウ,確かに拾えたのですが


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 これはなんだ。


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 形状的には間違いなく岩脈タイプのメノウなのですが,やたら濃色。こういう色味のメノウ,河原では見たことありません。


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 とどめがこれ。


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 水に濡れた時に強く,青い光を放ちます。元は白メノウ(玉髄)と思われます。その本来透明だった部分が黒くなり,その上にペンキで塗ったような白が被っています。これが青く光る。


 なんだこりゃ。


 この時はそれで終わったのですが,ずっと気になってました。この2個をキーボードの向こうに置いて毎日矯めつ眇すがめつ,その成因を考えていました。


 とにかくもっとサンプルが必要。その気になれば海にはいつでも行ける(海なし県の皆さんごめんなさい)のですが最近は多忙な上にざくろ石に心奪われておりました。メニエール病も収まりざくろ石もおなか一杯。時を得てようやく出撃です。


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 朝の海。ゴミが大量に打ちあがる海岸もあるそうですが,ここらは自然の海藻屑がほとんど。潮位はやや高い時間ですが,問題なく歩けます。

 

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 フグとホヤ。


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 これ何かというと,クラゲの日干し。たぶんアカクラゲ。さしもの毒クラゲもこうなると哀れです。

 

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 さっそく玉髄ゲット。玉川でよく見るタイプです。

 

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 困ったことに,潮に濡れた玉石がみんな美しく見える。片っ端から手に取ってしまいます。こらこら「夜目遠目」のたぐいだぞ。


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 ああキレイ。

 

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 これはちとグロい。でも面白い。


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 貝化石を含む石灰岩と砂岩が交錯したやつ。楽しいよう。


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 もちろんメノウも拾います。メノウは固くもろいので,周囲の石より大きく角ばっていて探しやすいのです。


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 ありました。黒いメノウ。左上に小さな晶洞があってミクロな水晶が生えてます。


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 目が慣れてきたのか,小さなものも目に付くようになりました。これは半分黒化してます。


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 これも。色味はほぼスモーキークオーツ(煙水晶)ですね。


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 デカいのゲット。1キロ以上あります。そうと知らなければただの黒い石にしか見えなかったでしょう。


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 欠けた部分から本来の半透明な部分が見えてます。黒化は表面から進むようです。


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 もっとデカいのがあった。2キロくらいあるでしょうか,ずしりと。黒化して,一部青変しています。

 

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 ガラス状の「へき開」,これもメノウらしさ。この大きさのメノウ,河原で拾ったら大感動だったろうなあ。


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 晶洞と縞模様。間違いなくメノウです。丸い,「馬の脳」に例えられた本来の「瑪瑙」。2つに切断して内部の晶洞を見てみたい。


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 これぞ「久慈川色」のメノウ。河原でこの色のを拾えたら大成功。でも一部黒化しています。


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 黒化が進行する様子が見て取れます。このメノウは黒化の途中で割れて,そのまま打ち上げられたのでしょう。


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 青変したのも見つけました。


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 黒化したのちに青変する,と私は考えます。


 さてここから考察。はい退屈だから飛ばしてけっこうですよー。


 メノウというのは硬くち密でスキがないように見えて,実は細かな穴が無数に開いています。多孔質といいます。ここに薬品を染み込ませることで着色することができます。市販されている赤や青のメノウの多くがこうした人工のものです。いえケチつけるわけではなく,そうした色をまとうことでパワーストーンとしての力を持つことになるんだそうですよ。


 着色の方法,使う薬品,染まる色は,そのメノウの成分つまりは産地によって異なるとやら。濃酸で煮たり,紫外線を当てたり,染料を染み込ませて熱で焼き付けたり。


 久慈川のメノウの場合,おそらく海水中の何かの成分,例えば塩素イオンなんかが少しずつ染み込むことでこの変色が起こるのでしょう。金属イオンかも知れない。そこに「色中心」という物理的な現象が関わるらしいのですが専門外なのでスルー。とにかく久慈川メノウではまず黒化し,次に青変する。それはたぶん海底で,ゆっくりゆっくり進行するものと思われます。


 神秘です。火山活動で生まれたメノウが,山から流れ出し,砕かれつつ川を下る。砂になる前に海に出たものが海底に眠り,変化し,そして陸に戻ってくる。中島みゆきの歌にもそういうのがありました。石にも運命の変転があるということか。


 無心虚心に多孔質の中にすべてを受け入れるメノウたち。母なる海の懐に抱かれてメノウはどう変わっていったのでしょう。黒衣をまとうものもいれば青い光を宿すものもいました。思索に沈潜するものもいれば悟りに至ったものもいたでしょう。


 2時間海岸を歩いてたっぷり潮騒を聞いたら,すっかり心が洗われたような,ほんのり青く色づいたような感覚になりました。雑念煩悩に満ちた私ですら,です。本当にいつか,海辺に暮らしてみようかな。海岸の石たちを見て,そんな思いを抱いてみたり。

 


沈黙を 長くつづけし石ゆえに 石の笑いはとどまらぬなり 方代

 

 

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