ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

カヤランクモラン

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 10月23日月曜日。台風21号が足早に過ぎ去って,午後はすっきり晴れました。こんな時は仕事サボって秘密の「への6号」フィールドへ行きます。ここはなんと!着生ランが拾える! このフィールドは杉林で,ランがたくさん着生しているその枝が風で折れやすく,大風のあとは哀れなランたちが死屍累々と道に転がっているのです。


 あれ? 今日はないなあ。あれだけ風が吹けば,そこら中に落ちてるはずなのになあ。


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 ようやくあった。ひと枝に,カヤランとクモランが付いてました。

 

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 カヤランの,ごく若い個体。

 

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 クモラン,これで成体です。実をつけてました。なんか枝に抱き着いてるみたいですね。杉の枝の直径は1センチほど。

 


 過去に拾ったものもお見せします。

 

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 カヤランの大株です。大雪で倒れ,伐られた木に付いてました。冬に小さくつぼみができていて,6月に1センチほどの可憐でランらしい花を咲かせます。

 

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 実が付いているのも。右下に突き出してるのが実です。粉のような微細な種子を散らします。種子は運良く木の幹に付き,共生菌に出会えたものだけが発芽します。ランの種子は胚乳(養分)をまったく持たず,菌(カビやキノコ)と共生することではじめて芽生え,生長できるのです。

 

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 家に持ち帰ってから開花するのもいます。小さいけど,ちゃんとランの花ですね。

 

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 これはクモラン。葉のように見えるのは根。これ根なんです。根で着生し,養分や水分を吸収し,根で光合成をします。

 

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 緑色の,長さ2ミリほどの花をつけます。

 

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 盛大に結実したクモラン。……落下するとは。皮肉な運命でした。


 着生ランというのは,地上を離れ大木の幹や枝に根を張って生育する一群のラン科植物を指します。好事家に狙われる希少なものが多いのですが,カヤランもクモランも花が小さく地味なことが幸いして盗掘者のターゲットになることは少ない。クモランこそ県のレッドデータブックに載ってはいますが,小さく目立たないだけで実は割と生育してるそうです。それに対して同じ着生ランのセッコクや岩上に着生するウチョウランは華麗に開花してしまうもので,花目当て,転売目当ての盗掘が絶えません。あのカトレアも実は着生ランが出自です。


 言われる前に言っときます。私は野生植物を自宅に持ち帰ってしまうような下品な人間ではありません。昔の職場で,シュンランの鉢植えを持ってきてこれは山採りなんだよなんて自慢していたオバサンがおりましたが,普段から下衆な言動の人で,ああこういう人品下劣な一般人が山を荒らすんだなと冷ややかに見ておりました。やはり野に置けレンゲソウ。野生植物は野外で見てこそです。

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 じゃあなんで拾いに行くのか。正直に言うと,かつてはかなり持ち帰りました。着生ランは地上では生きていけない,それを救うためでした。でも今は拾いません。カヤランもクモランも,どちらにせよ生きていけないのです。まず環境変化に弱い。故郷の森を離れると,水を欠かさず陽にも当て,かいがいしく世話していても死んでしまうのです。弱っているのが顔に出ないのが災いして,葉が黒く固くなり,表面に地衣類が付けばもう手遅れ。連れ帰ったものが1枚でも新葉を出すのを見たことがありません。では自然の状態に近く,と庭の木に付けてみればあっという間に食べられてしまいます。癖のないお味なのでしょうか,名も知らぬガの幼虫から呆れたことにダンゴムシやワラジムシ,ザコみたいな連中にまでおいしく賞味されて丸坊主にされてしまいます。

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 葉に地衣類が付いているの,わかりますか? もう長くはありません。

 


 むかし,孔子さまの一行がある村に通りかかったとき,一人の婦人が泣いていました。かつて夫が,義父が,そして今度は子が虎に殺されたとのこと。なんでもっと安全な土地に移らないのかと尋ねると,虎ゆえにここでは過酷な政治が行われないから,と答えます。孔子さまは弟子たちに言います。覚えておきなさい,圧政は虎よりも恐ろしいものなのだと。


 着生ランたちを見ていると,なんでこいつらはこんな過酷な樹上に暮らす道を選んだのかと思います。大地に根付けば,水も,養分も,共生菌も,何不自由なく手に入るのに。大風や大雪に怯えることもないのに。……きっと地上は,乾燥や飢えよりももっと恐ろしいものが満ち満ちているのでしょう。木に這い上がるほかないくらいに。実際に落ちたランたちが瞬く間に弱り,食われ,地衣類に覆われていくのを見ていると,その感を強くします。


 結局,この日見たのはあのひと枝だけ。あまり落ちなかったのか,他の人にもう拾われてしまったか。踏まれないように,道の端に置いてやりました。何をしてやっても……とは思いつつ。

 


 わざわざガソリン代かけて,何やってるんだろうな,わし。

 

 

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茨城県北芸術祭2

 

高萩・北茨城篇
 はい,ちゃんと続きますよ。茨城県北芸術祭好き勝手レポート,第2回は茨城県北部の海沿いの地域。かつて常磐炭田で栄えた所で,20年ほど前まではその当時の遺構もちらほら残っていたのですが,もう何もない。大きな企業が撤退しちゃったり,津波の被害があったり,すっかり静かな土地になってしまいました。石井竜也野口雨情のふるさとです。この二人並べるのもどうかと思うけど。


 まずは高萩市の「穂積家住宅」。江戸時代から明治期の豪農・実業家の旧宅だそうで,その典雅な家と庭に興趣をそそられます。昔はこういう家の人が,地域の繁栄に尽くし,芸術や文化にも出費を惜しまなかったとか。ここを展示会場にあてた県の人,その慧眼恐れ入ります。

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B-01  紅毛先生の驚異の部屋

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 あ,ステキなうしろ姿のお姉さん💛   ……じゃなくて,部屋全体がレトロ趣味の事物を並べた「作品」です。昔この家の主人の友人に紅毛人の医者がいた,という設定だそうで。いいなあ。こんな古くてヘンなものを手に入れたら私でもなんかストーリーを作って並べたくなる。置かれたもの一つ一つ丁寧に写真撮ったんだけど,暗い部屋とてみんな手ブレしてしまいました。

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B-02   天を仰ぎ 地に立つ 者として

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 暗いくらーい納戸の中,砂の山に一輪立つユリの花。華道家の作品ですが,花は3Dプリンターで作成したものとか。美しい作品でした。でも暗くて写真にならなかった。返す返すも三脚を持ってこなかったのが悔やまれます。

 

B-03 pearl blueの襞 ―空へ・ソラから―

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 空の青を映した陶器作品です。確かにキレイな色ですね。でもここ穂積家の庭は柿の実をはじめとして自然の燦然と輝く色に満ち溢れていて,私にはそっちのほうが美しく見えました。展示場所に負かされた,という感です。

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B-04  ウェブ・オブ・ライフ

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 うん,これも美術館に飾られていたならまた違った感想が持てたと思います。


 穂積家住宅内部。期間限定でレストランとして営業してるとか。いずれ。

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B-05  落ちてきた空

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 この大きさはアッパレですが,まあそんなものかと。個人的には,描かれた絵にもうひとひねりあればなあ,なんて。だって,意味深な図柄もないわけじゃないけど,子供が描くような雲と空なんだもん。


B-06  テトラパッド

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 本来は触れられる作品のはずが「安全を考慮して」遠くから眺めるだけになったとか。その時点でもうダメじゃん。


B-07  ウル・シェルター

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 私の大好きな場所,高戸小浜(たかどこはま)海岸にでんと置かれてました。やはりなんというか,「自然」に負けているんだよなあ。


C-01  チームラボ  小さき無限に咲く花の、かそけき今を思うなりけり

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 このタイトルに圧倒。チームラボはもう有名どころと言っていいでしょうが,デジタルアートのみならず言霊使いとしても一流だと知れます。
 作品はもちろん一流。6つのデジタル映像作品は,いずれも観客が楽しめるもので,多くが参加型。観客参加型芸術というと多賀駅前のものがそうであったように押しつけがましく,しかもハードルが高かったりできたものを晒されたり。その点,チームラボの作品は一過性。さわると蝶が飛ぶ,動かすと花が散る。美しく楽しく,あとくされがない。昭和のゲージュツ家の皆さん,これからはこれが参加型ですよ。


「小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々」

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 抹茶のたてられた茶碗に,花の映像が投影されています。茶碗を動かすと花が散り,茶碗には新たな花が咲きます。ずっと遊んでしまいました。


Nirvana

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 ニルヴァーナ,涅槃でしょうか。見ているだけで楽しい。


「境界のない群蝶」

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 花が無限に咲き続け,触れると蝶が舞う。花と蝶が動くだけでも楽しいのに,参加できちゃうんです。

 

「世界はこんなにもうつくしく,やさしい」

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 花,文字,雨,雷。観客は天象気象を操ります。

 

「増殖する生命Ⅱ」

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 無限に増殖してます,はい。

 


C-02  ケノプシア(人のいない空間)

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 子供に描かせた絵を並べて,それで?


 次の0304茨城大学五浦美術文化研究所。岡倉天心日本美術院の遺構を茨城大が管理している所です。私には縁のある場所で,さあどんなかな。


C-03  雑草

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 おお,六角堂。久しぶり。で,どこに作品あんのよ。

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 え?

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 これ!?

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 奥にもヒルガオが。すごい。驚いた。


C-04  Artificial Rock No.109

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 で,03と比べてこれ。相手が悪かったな。風景にも負けている。

 

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 旅する蝶,アサギマダラがハマギクの花に憩っておりました。茨城ではこの舞姫が海岸で見られるのは珍しい事です。これから遠く東南アジアへの旅路に就きます。


 以下05~08は廃校になった小学校が舞台。後述する木造校舎の古い学校ならともかく,こんな鉄筋づくりの新しい学校まで閉じることになるとは。さりげなく階段の下に片づけてあった「閉校式々場」の立て看板に胸が詰まります。

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C-05  物々交換プロジェクト

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 何か月もかけてこのリヤカーを引っ張り,出会う人々と物々交換をしたのだそうです。こういうのを芸術的活動というのでしょうが,残念ながらこの芸術祭に私が求めるものとは180度ずれてます。まあお疲れさま。


C-06  HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)

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 出ましたビッグネーム。県がいくら積んでるか知らないけど,お金の無駄です。


C-07  ケノプシア(人のいない空間)

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 机や椅子といった学校の備品を並べて,それで?


C-08  今ここにある宙(そら)

   作者名 林剛人丸(はやしごうじんまる)

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 展示場所は体育館。中に入っていきなりこのビジュアル。暗幕に午後の陽が当たった赤色は作者の計算外だったかもしれませんが,この色の対比にタマシイ持ってかれてしばらく魅入っておりました。……で,作品もよかったけど,なんなんだこの作者名。思わず名乗りたくなるいい名だ。お友達になりたいなあ。


C-09  Untitled (kenpoku)

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 だからどうした感がハンパない。ほんとにどうしましょ。緑の幕を草原にぴんと横に張っただけなんです。しかも自家用車でしか来れない山の中にこれだけがぽつんと。私はこのあたりの山道に詳しいから来れたけど,一般の人はたどり着くだけで大変なことでしょう。で,これだけ。まあ,ある意味びっくりはしましたけどね。

 


 さあ次回は常陸太田篇。言いたいこと言うぞ。 

 

 

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百里基地航空祭2016 がんばれファントム

 人様の好意で招待券を手に入れ,楽しみに楽しみにしていた百里航空観閲式,中止。


 まうー。まうーーー。


 人語を越えた泣き声をあげてしまいました。自衛隊の担当者は1万人もの招待客一人一人に電話連絡だそうです。ああ,なんて。


 正確には,今回中止になったのは「平成29年度航空観閲式 予行」。本番の観閲式は政府行事で総理大臣はじめお歴々のみが来るのですが,通常その前日,今回は1週間前に予行演習が行われ,我々一般人が招待していただけるのです。知っている関係者から声を掛けられ,きちんと申し込んで審査してもらって,招待状が届いたのが先々週。大喜びしていたのに。「富士山で嵐に遭っても大丈夫」の雨具まで用意したのに。10月29日の本番は予行なしのぶっつけ本番だそうです。


 中止の理由はやはり今回の台風なのですが,直前に百里でファントムの足が折れたりしていやな予感はしてました。やはりそうか,という気持ちです。間が悪いことはあるものです。


 悲しいので,昨年の百里航空祭の写真をあげて気を静めようかと。

 

 2016年11月26日。一般開放前日の,地元民のみの公開日。真っ青な空。翌日の一般公開日が曇天だったことを思うと,まさに晴れ男の面目躍如です。

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 まずはファントム編隊のご挨拶。百里といったらファントムでしょう。

 

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 RFの青は本当にきれいです。

 

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 EJ。正面顔は意外にほっそりしてるって,知ってた?

 

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 320番機。

 

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 これぞ百里の尾白鷲。

 

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 イーグルも登場。飛行写真はうまく撮れませんでした。まだお嫁入直後の「奈保子ちゃん」パートナーたち参照)の扱いに慣れてなかったもので。

 

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 百里基地のまわりには,いつでもこんな大砲構えたおじさんがたくさんいます。すごいなあ。何百万円もするんだろうなあ。何やってる人たちなんだろうなあ。

 

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 きゅいーん。この部隊はF-35に機種改変の予定だそうですが,この轟音を聞けなくなるかと思うとちと寂しい。

 

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 ブラックホーク

 

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 アパッチ。

 

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 F-2。

 

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 いよいよブルーインパルスの「展示飛行」です。これは「チェンジ・オーバー・ターン」という技(課目)に入るところ。

 

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 筑波山の上を編隊で旋回してます。これだけでもすごいことなんでしょうね。

 

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 出ました18番。

 

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 滑走路上をパス。

 

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 オリジナル・レベル・キューピッド,という技かな。

 

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 オリンピック。万博。日本が輝いた日,空はいつでも日本晴れ。そしてそこには必ずブルーインパルスがいました。

 

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 コーク・スクリュー。キレイだなあ。

 

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 クリスマスツリー・ローパスと言うそうな。

 

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 列線と筑波山

 

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 がんばれファントム。74式戦車もそうだけど,あの時代のものが今でも愛されていることになんか胸が熱くなります。きっと,みんながあの時代そのものを愛しているのでしょう。

 

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 ブルーの列線。

 

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 筑波山とファントム。

 

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 素晴らしい1日をありがとうございました。

 

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 感心するのは,終了後の駐車場にゴミ一つ落ちてないこと。航空祭愛する人たちのお祭りだったことがうかがえます。

 

 飛行機と,愛と,青空と。いつまでも。

 

 

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ヒロヘリアオイラガ 【毛虫だ。】

 正面のグリーンカーテンに這わせたミツバアケビの葉がえらく食われていることに,今朝の出がけに気がつきました。家人に捜索を依頼して,帰宅後に聞いたらヤバそうな毛虫がいたとのこと。何者か。


 翌日は休日。早速朝から繰り出してみると……いました。

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 おまわりさん,こいつです。

 

 また出やがった,ヒロヘリアオイラガ。昨年,うちのカリンとフジとブルーベリーを食い散らかした極悪害虫。今年はそっちが無事なので油断していました。そうか蛾の仲間には広食性と言ってなんでも食べるのがいますが,コイツもそうだったか。言われてみれば,昨年大豊作だったミツバアケビの収穫の時,なんか痛痒いのに刺されたよなあ。たぶん今年は母虫がミツバアケビにだけ産卵したのでしょう。我が家のミツバアケビの美味なることが,害虫界のツイッターにでも紹介されたか。いい迷惑だ。

 

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 結構上手に隠れます。ああ不覚。

 

 こいつは近年日本に入ってきた外来の昆虫です。天敵がいないこともあって,大繁殖します。どうやらウチの庭がロックオンされているようで,ここ数年やりたい放題。イラガの仲間の特徴として,毒棘を持ってます。痒くただれるドクガ類のそれと違い,痛いです。

 

 まあいい機会です。伸びすぎたつるの選定と合わせて,鬼退治の始まりです。長袖,手袋で防御を固め,使い慣れたピンセットを片手にさあ敵地へ。

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 取れるわ取れるわ35匹。

 

 可愛そうだけど,毒毛虫は火あぶり。じつはドクガと違い,イラガの毒棘は虫が生きている時にしか効かないので,必ずしも焼く必要はないのですが……気分の問題ってことで。

 

 ケムシばかりだったので,今年も咲いたススヤアカバナをどうぞ。

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茨城県北芸術祭 1

日立篇
 2016年秋,茨城県の北部市町村のひろーい範囲を舞台として,現代美術作品の展示が行われました。題して茨城県北芸術祭。いまや全国で行われるこの手のイベント,もはや目新しいものではありませんし,じっさい他の有名どころと比べて経済効果も大きくはなかったようです。


 でもなにせ地元開催,現代美術は大好きなので休日ごとに車で回って,なんと全100作品コンプリートしました。当たり外れがあった,と言えるのも全制覇したからこそ。何より,普段なら絶対に立ち寄らないような場所を歩くことができて,思わぬ発見がたくさんあったことが大いなる収穫です。


 各作品の詳細は県のHPがあるのでそちらをご覧ください。それぞれに作者の作品にかける思いはあるようですが,キリがないのでごく主観で感想を書きます。ポイントは私を驚かせたかどうか。芸術家ってそれが商売でしょ?


 今回は作品番号Aから始まる日立篇です。工業都市・日立の街中や山中を歩き回って参りました。やたら長いので,写真だけざっとご覧いただければ。


A-01 朝日立つ浜の産土神の御座(あさひたつはまのうぶすながみのみざ)

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 海岸の松林にドカンと鎮座,というか屹立していました。こういうのキライじゃないんだけど,今一つびっくりが足りなかったかな。


A-02 うつろ舟ミニ博物館
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 これは面白かった。まずロケーション。海風吹き付ける海岸に立つ一軒の簡素だけど妙に趣味のいいコテージ。世捨て人の主人公がこんな家に住んでいる映画,いくつも知ってるぞ。そこに誰かが訪ねてくるところから物語が始まるやつ。どうやらここで営業していた美容室の建物のようです。うん,ここに開店した心意気はよく伝わる。でもお客さん来なかったろうなあ。

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 で,うつろ舟というのは江戸時代に見たこともない文字が書かれた丸い舟が常陸の国の浜に漂着し,中からこれまた不思議な風体の女性が降り立ったというお話。テレビで見たことあるけど,たぶん滝沢馬琴の創作だという結論でした。それをいかにも現実の事件であったかのように博物館に仕立て上げたのがこの作品。家まるごと作品。虚構を口裏合わせて現実化,というのはアニメや特撮のムック本が大好物の私にはど真ん中です。

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 01と02の展示がある小貝ヶ浜は風光明媚。海と奇岩と松林と,秋にはハマギクやツワブキが咲き誇ります。何もないけどいいところ。

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A-03 やどかりに「やど」をわたしてみる ーBorderー

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 はいこれ,面白かった。細工物の「街」を乗せた透明な殻にやどかりさんに入っていただくという作品。その行為よりも,街を乗せた人工の「貝殻」がよくできていて,なんか変な部分を刺激されました。やどかりさん死にかけてたけど。

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(余計なことですが,このやどかりさんは暖海に住む「ソメンヤドカリ」ではないかと。こんな季節の茨城は寒くなかったのかな。それとこの種は貝殻にイソギンチャクを張り付ける性質があるのですが,それが生理的に意味があった可能性もあります)


A-04 回廊の中で:この場所のための4つの虹 ー KENPOKU ART 2016のために

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 日立駅を覆ってました。

 

A-05 風景幻灯機

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 現実の日立の海景に非現実が出現する。まあわかります。


 04と05は,海の見えるおしゃれなカフェで評判になったJR日立駅。本当に素敵な駅ですよ。そして以下06から10は駅前にある市営の複合施設,日立シビックセンター。


A-06 クリスタルパレス:万国原子力発電国産業製作品大博覧会

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 光の魔術を幻出するいくつものシャンデリア。すべてウランガラスでできていて,ブラックライトで蛍光を発し闇に浮かびます。それぞれのシャンデリアには原発稼働国の名がつけられ,シャンデリアの大きさはその国の発電規模を表すというメッセージ性の強い作品なのですが,ただその美しさに魅入られてずーっと展示会場に立ちすくんでいました。「科学とオカルト―」でもやったように,こういう光の演出が好きなんです。

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A-07 日立電輪塔

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 これ,本当はラジオを持参する参加型の作品だったようですが,普段ラジオを持ち歩く人がどれだけいるのだろう。


A-08 グロース:テンドリル /ハイドロダイナミック:フィッコ(FICCO)
A-09 Solitarium
A-10 velvet order(柔らかい秩序)2016 summer night

 

 この3つ,動画作品です。しかもプラネタリウムの半球スクリーンに映し出すというスケールの大きなものです。画像ありません。「自己増殖するアルゴリズム」で画像が作られ続ける08の,テヅルモヅルみたいのが面白かった。09は無限継続するアニメーション。ずっと見ていたかった。動画ほしいなあ。


 おお,10作品だけでこれだけ費やした。このブログって容量どんなもんだっけ? A-25までいけるかな。


A-11 ノアのバス

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 広場に置かれた地元日立電鉄の路線バス。内部をノアの箱舟に見立てて,本物のインコやウサギが闊歩してます。発想がいいんですけど,作品自体はあまり出来が良くない。箱舟になぞらえるならもっと中の生き物や植物にひとひねり欲しかった。

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A-12 日立工場の建物間の何もない場所で、私は未開人と飢饉や戦争の犠牲者たちを織り込んだ詩を読む

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 タイトルが長いだけ。


A-13 フィールド・クリスタル

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 表示もなく,係の人もいなかったのでこれが「さわれる」作品とは知らなかった。日立市郷土博物館の展示は,なんかやる気なかったなあ。駐車場でも苦労したし。


A-14 御岩山雲龍図

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 龍の天井画です。現代美術ではないのだけど,「日本最高のパワースポット」御岩山での展示ということもあり,何か意味性を感じます。作者は若い女性です。


A-15 杜の蜃気楼

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 下手な写真。公式HPの写真でご覧ください。14と15の展示のあった御岩山は本当にただならぬ空気の場所です。いずれ稿を改めて。


A-16 Playable Sculpture(遊べる彫刻)

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 壊れてて遊べない。その時点でこれはただのガラクタでした。日鉱記念館という迂遠な施設に作品これだけというのも。もうここは使わないでください。

 

 以下9作品は常陸多賀駅前商店街,自称「多賀パルコ」の展示。パルコ…っておい。すべて閉店した店舗が会場です。


A-17 スマイリー・バッグ・ポートレート

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 こういうのはパス。


A-18 看板屋なかざき

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 うん,わかる。


A-19 エレクトロニコス・ファンタスティコス! in 日立

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 観客参加型,なのかな。


A-20 ニット・インベーダー in 常陸多賀

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 常陸多賀駅前の寂れようにショックだったけど,まさか銀行まで撤退していたとは。作品よりもその展示会場である銀行内部,特に大金庫のあったところなんかが興味を惹かれました。


A-21 ポリプラネットカンパニー

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 多賀駅前の展示でとにかく驚かされ,面白かったのはこれ。膨大なコレクションと言っていいでしょう。特に男性全般が心に内包する「収集」という因業をこれほど堂々と表出されるとかえって笑ってしまいます。この作者さんには長生きしてほしい。

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A-22 山のまぼろし

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 はいはい。


A-23 A Wonder Lasts but Nine Days ー友子の噂ー

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 よしよし。


A-24 この先、記憶の十字交差あり。

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 うーむ。


A-25 ヒタチタガ・コンクリート・マンガ・ベンチ・コレクション

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 それで?


 街をアートで満たそう,という発想はわかりますがそれには本当にお祭り規模の取り組みが必要ではないでしょうか。寂しさ,わびしさが強調されては逆効果かと。


 身勝手なコメント失礼しました。本当に個人的見解なんです。次回は北茨城・高萩篇で。

 

 

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JCO臨界事故の記憶【過激注意】

 わたしは,生きている。あなたも,生きている。本当に?
 実はもう死んでいないか。此岸を生きているつもりで,実は彼岸のかなたから生ある世界を覗いているんじゃあないか。

 

 今日を生き延びることは1日死に近づくことだなんて,そんな落語みたいなことは言いません。もっと生物学的な,生と死を。

 

 そもそも生とは何か。こう書いているこの瞬間も,私の体の中ではたくさんの細胞が死んでいる。その数,1日あたり3000億個。1秒間に300個以上。

 

 恐れるな。その死ぬ数と同じだけ,新しい細胞が生まれている。1日当たり3000億個。何のことはない,収支は損得無しなのだ。

 

   生 / 死 = 3000億 / 3000億 = 1

 

 我々の体には,死ぬことで用をなす細胞がたくさんある。皮膚の表皮細胞,腸の粘膜細胞,免疫細胞,などなど。そして死んだ仲間を補って,新しい細胞がその場所を埋める。これが細胞の代謝であり,代謝が正しく行われている状態,それこそが「生きている」ことなのだ。

 

 さてここで,ある人の心臓を止めたとしよう。技術的にはたやすいこと。人々はその人が亡くなったと考える。しかしまだ,体を構成する60兆の細胞のほとんどは死んでいない。だが細胞の代謝には大きな影響が出る。

 

 血流は,全身の細胞に酸素と栄養分を送り続けている。細胞はこれを用いて「呼吸」と呼ばれる反応を行い,生命活動のエネルギーを作り出している。血流が止まると,この呼吸も止まる。また,血流が止まることで老廃物や毒素も溜まる。数分後,生まれる細胞が半分に,死ぬ細胞が倍になったとしよう。

 

   生 / 死= 1500億 / 6000億 = 1 / 4

 

 細胞代謝の収支は崩れた。生きている細胞は失われていき,この値は秒刻みで小さくなっていく。この,収支の値が1を割り込んだ状態が死である。

 

 思い出してください。東海村の臨界事故で被曝した作業員たちを。特に,20シーベルトの,あろうことか中性子線を浴びてしまったあの人を。

 

 この絶望的な量の中性子線は,全身の細胞のDNAを破壊し,染色体を引きちぎった。結果,細胞の分裂能力は失われてしまった。これがどういうことかわかるだろうか。体の中に,新しい細胞が生まれなくなったということだ。3000億,いやこの場合細胞本体にもダメージがあるのでそれ以上の細胞が1日に失われていく。失われる細胞を仮に6000億として,

 

   生 / 死 = 0 / 6000億 =

 

 6000億という数字に意味はなかった。ご理解いただけるだろうか。あの人は,1999年9月30日のあの瞬間に,実は死んでいたのだ。被曝直後に嘔吐し一時意識を失ったというが,痛くもかゆくもなくこの人は自力で救急車に乗った。しかし細胞収支という尺度では,その時にはもう死んでいたのである。

 

 単純な計算をもう一つ。死ぬ細胞6000億。体の細胞60兆で割ってみる。

 

   6000億 / 60兆  = 1 / 100

 

 1日あたり体の百分の一の細胞が失われていくということ。さあこの人がこの世から消滅するのは何日後?

 

 過去の外国の臨界事故では,死亡するのは数日から長くても3週間後だった。この人も何もせず静かに看取ってやればその範囲で死ねたはずだ。しかし日本の原子力には利権が多い。元を正せば税金である金を湯水のように使う快感に毒された人々がたくさんいる。水戸の大工町には原子力関係者専用の高級クラブというものも存在した。死人が出てはよろしくない。かくてこの作業員は東大病院に搬送され,その道の権威という医療者たちに託された。
 もちろん日本の医療者は,目の前に患者がいれば全力でこれを救おうとする。かくして,ありとあらゆる延命治療が施されることとなる。担当の看護師の看護記録簿,その「最終目標」には「集中治療室を退出できること」と書かれたという。

 

 想像してください。いくつものチューブにつながれ,表皮を失くし生皮をはがれたような全身から体液がじくじくと漏れ続け,腸は内壁をなくしてただの管と成り果てている,そんな姿で生かされ続けたのだ。もう嫌だ,家に帰りたい,俺はモルモットじゃない。そう言えたのも被爆後11日目に呼吸チューブが取り付けられるまで。一度心臓が止まっても蘇生措置が施され,それ以後は一切の意思表示がなくなった。それでも生かされ続けた。83日間。

 

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 過激な描写,お許しください。上の文章は,臨界事故から3か月ほど経って書いたものに,少し冷静になってから加筆したものです。

 

 その時私は,東海村に住んでいました。と言っても事故の瞬間,いちどきに多量の中性子線が飛び散ったその時には遠い職場にいたのですが。職場にはテレビもないので何も知らず,家に帰ったら頭上をヘリコプターが飛び交って大通りにはパトカーが走り回る大騒ぎの真っ最中でした。

 

 亡くなった作業員の方,本当にお気の毒でした。会社の指示通りに作業しただけなのに。糾弾されるべきは,原子力関係者なら常識のはずの「臨界」に対する警戒を一切排除して,ただ効率だけを求めた会社関係者でしょう。科学の国ニッポンの,最高学府を出た人たちのいる会社ですが,やったことは発展途上国の独裁者レベルでした。もちろんその後ものうのうと生きていたのでしょうが。

 

 ウラン235プルトニウム239などの核分裂物質では,一定量集積すると,一個の原子核が分裂した時の中性子が他の原子核に衝突してまた核分裂を起こさせるという連鎖反応が継続する状態になります。これを臨界といい,ある条件の参考値でいうとU235なら12キロ,Pu239なら4キロの塊にすると臨界です。原子力の研究者は,核物質を集めすぎてうっかり臨界状態になってしまうことをそれはそれは警戒するものです。


 さてこの臨界。厳重な密閉容器の中で臨界を起こさせコントロールし,熱エネルギーだけを取り出すのを原子炉といいます。オープンな場所で遮蔽もなくコントロールもされず,一気にエネルギーを開放してしまうのが原子爆弾。ではこのJCOで起きた臨界状態,どっちに近い?

 

 ミニマムな原子爆弾が緩慢に反応している状態が十数時間続いて,JCO社員の決死隊がこの裸の原子炉をぶっ壊して,ようやく臨界は終息しました。怖かったなあ,住民として。状況を理解している者として。

 

 事故後,被曝を心配する住民がガイガーカウンターを当ててもらって反応がない事で安心するという画像がテレビに流れました。ああ,シロウトはこんなに簡単に騙せるんだと思いました。たとえ致死量の中性子線を浴びたとして,直後なら放射化したナトリウムの反応があるかもしれませんが,数日でそれが排出された後にはなんの数値も出ません。死んでいるのに。

 

 新潮文庫「朽ちていった命 被曝治療83日間の記録」は,実に生々しい被曝患者の治療記録です。致死量の放射線に貫かれた人が,いかに無残な死に方をするのか。放射線とはかくも恐ろしいものなのか。勇気ある方のみにご一読をお薦めします。

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 私は,原子力の利用にはむしろ賛成の立場でした。生まれた時にはもう原子炉があった茨城県で育ち,政府や原子力関係者の「絶対安全」という言説をうのみにしていたからだと思います。しかしチェルノブイリの時の「日本では絶対起こらない」,JCOの時の「民間会社がやったこと」という物言いに疑問を持ち始めていました。2011年以前の段階で。

 

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 事故から半年経った春,カメラを片手にJCOの敷地の周囲を歩いてみました。動植物に影響が現れていないか見るためでした。特に何も変わったことはなく,ソメイヨシノオオイヌノフグリタチツボスミレもいつも通りの花を咲かせていて,ほっとしたものです。もちろん,この時には十一年後にもっとすさまじい原子力事故が起こることなど予想もしていませんでした。その時に私は原子力関係者のもっと浅ましい行動を目撃することになるのですが,それはまたいずれ。

 

 

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ハマナス退治

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  ハマナスです。そうあの,知床の岬に咲くというアレです。漢字で書くと浜梨です。 …… あれ?

 

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 この実が梨のようにおいしいというのでハマナシと呼ばれ,シとスが不明瞭の東北弁で語られるうちにナスになり,とどめに森繁久彌がナスと歌っちゃいました。で,ナシでもナスでもいいけど,本当はバラなんです。とてつもなく大輪で,芳香を持ち,群生する野生のバラなんです。学名ロサ・ルゴサ Rosa rugosa。外国でも園芸用に喜ばれ,バラの品種改良の原種の一つにもなりました。

 

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 北の浜辺のイメージですが,実は太平洋側は茨城県まで自生してます。果実にはビタミンCが豊富というので,海岸にあったのを採って食べてみました。…… あまりおいしいとは思えませんでした。種があったので,クサボケの時と同様にラティスの下の,アスファルトとの1センチほどの隙間に蒔いてみました。芽が出た!と思ったら,さすが頑強な海浜植物。あっという間に大株に育って,次々と花を咲かせるようになりました。

 

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 大株になるほどに,うちの家族が難色を示すようになりました。原因はこのトゲ。家の前の市道にハミ出してます。ご近所さんにケガさせたらどーすんだとのこと。いやほんとに,なんなんでしょこのすさまじい武装。綺麗な花にはトゲ云々というのをこれほど露骨に実践している例を,他にはあまり見かけません。


 とはいえ,これも海浜植物の常として強大な地下茎をすでに張り巡らせているはずです。掘るにしても1センチの幅,引っこ抜くにもあのトゲ。どうしようもないじゃん,と思ううちにクサボケの段でも書いた舗装工事が始まりました。成り行きに任せていたら,工事の人いわく「いや~抜くのに苦労しましたよ」。なんと古いアスファルトを剥がしたところで,地下茎をきれいさっぱり取り除いてくれたのです。あのトゲどうしたの?


 で,我が家と道路の間に隙間は無くなりました,と思ったら。

 

 

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 出ちゃった。 

 

 地下茎のかけらが残っていたんでしょうねえ。この写真,12月ですよ。なんかマンガみたいにアスファルトのかたまりをでーんとひっくり返して。

 

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 そしてまたあっという間に成長を遂げました。どうだ負けねーぞとばかりに繁茂し,ほれ見ろとばかりに花を咲かせます。完敗ですね,私の。

 

 それにしても感心するのは,小さな虫たちからのこの木の好かれ具合。アスファルトとコンクリートとレンガに囲まれた世界では,岩盤を衝いてそそり立つただ1本の木は,広大な砂漠にぽつんとあるオアシスなのでしょう。

 

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 花にはハナバチたちが集まり,葉は名も知らぬ幼虫やハバチに食われハキリバチにまで持っていかれ,カイガラムシに汁吸われ,根際には落ちてくる枯れ葉を当てにダンゴムシやワラジムシが住み着き,シワクシケアリまでもが巣をつくりました。


 しかしハマナスは動じません。食われようが吸われようが,日照独り占めなのを良いことに光合成をしまくり,食われる何倍ものスピードで枝を伸ばし葉を広げ,ひと夏花を咲かせ続けます。

 

 よーしよくわかった。根絶はやめた。育ったら切る。このパターンでいこう。せっかくなので花を楽しませてもらってから。

 

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 ちょきん。

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 ぎこぎこ。

 

 どうせすぐに復活しちゃうんでしょうけどね。

 

 スミレの時に女性を花に例える話を書きました。さてこのハマナスに当てはまる女性はいるかな? 派手に美しく,芳香を振りまき,トゲで武装し,とてつもなくしぶとく逞しい。 …… ちょっとどんなのか想像できません。少なくとも私の平凡な人生では出会ったことのないタイプです。皆さんの周りに,こんな女性はおられますか? ちなみにハマナスは皇太子妃雅子さまのお印でありますが,美しさ以外の上記の要素はあってほしくないなあ。

 

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 とにかく教訓。ハマナスを庭に植えてはならない。きっと手に負えないから。美女とはそういうものです。

 

 

 

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