ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ひたち海浜公園 かつての水戸射爆場で自然観察

  

  また少し長くなってしまいました。お時間のある時にどうぞ。

 

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 茨城生物の会,という団体に所属してます。自然観察会などを催す団体ですが,観察会に参加するメンバーの平均年齢が70台後半になんなんとするすさまじい団体です。


 さて今日は,その生物の会で国営ひたち海浜公園の生物を観察します。ここんとこ会の活動から遠ざかっていたのですが,見たいものもあるので朝から出動です。午後は雨だそうですが,たぶん私が外を歩く間は大丈夫。

 

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 駐車場はガラガラですが。


 ひたち海浜公園と聞いて,ネモフィラでも見るんかいと思われるかも知れませんが,アレは5月初めです。そもそも植栽だし。以前にうっかり行ってしまって人の波を見る羽目になって以来,これと夏フェスの時期は近づかないようにしています。いやほんとに,人混みは苦手なんだってば。

 

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 ほら人の波。これで2010年。今はもっとすごいことに。

 

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 今日の参加者の皆さん。海浜公園ではこういう自然観察会を年中開催していて,今日は茨城生物の会がそれに便乗した形です。会のメンバーがボランティアなどで深く関わっているのだそうで。本日は①「ひたちなか自然の森」でオオウメガサソウを見る ②砂丘の希少生物の観察 ③湧水地の生物観察 と盛りだくさん。どれでも1つで1日つぶせるほどの濃い場所を,2時間で回るというダイジェスト版。ハードだ。大丈夫かジイさんたち。

 

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 となりの芝生にオオマツヨイグサ外来種ですがキレイですね。太宰治の「月見草」の正体。茨城の海岸地方に定着しています。


 一般の皆さんはネモフィラやら夏フェスやらでしかご存じないかもしれませんが,ここひたち海浜公園は古い自然が広範囲で残された自然観察地としても知られています。広大な砂丘。静謐な松林。泉の湧く森。ここに原生の自然が残されたのは,長く軍用地に用いられたことで他の利用が制限されたためでした。公園のほうでは,その自然環境の保護にも力を入れていて,定期的に自然観察会が開かれています。


 まずは「ひたちなか自然の森」の奥深く,松林に生育するオオウメガサソウの観察です。この自生地はふだん立ち入り禁止になっていて,6月はじめの花期とこういった観察会にだけ公開されます。


 ……なんだけど,なかなかたどり着かない。人数が多く列が伸びるのと,ジイさん連中はみな一家言のある人たちなので何か見つけるたびに一般参加者に演説をぶち始めるので大変です。こういう年寄りになるな,と肝に銘じて前進。

 

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 ムラサキシキブの,これが花。美しい実は有名ですが,花もなかなか。

 

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 ナツハゼの実,食べられます。

 

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 出た,ドクウツギ。日本三大猛毒植物の一つ。実に甘みがあって,食べた子供がころころ死んだそうです,昔は。この美味しそうな実があまりに危険で,かつては駆除の対象だったこともあって珍しい植物となっていましたが,この森には残っているんです。子供が食べたらどうする気だろうと思っていましたが,ここでも駆除したのでしょうか。だいぶ少なくなりました。とは言えこれも貴重な日本の野生植物。公園としてはすべて除去するのには抵抗もあるでしょう。悩ましいですね。

 

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 ようやく着いた保護地区。松の落ち葉が深く積もったその中に。

 

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 これがオオウメガサソウ。本州では青森県岩手県とここひたちなかの森にしかありません。このブログでもご紹介してきましたが,なぜか茨城にはこういう隔離分布をする植物がたくさんあります。実の状態ですが記録写真。


 困ったことに,時間が押していてじっくり三脚を据えての撮影ができません。ジェニファーの90ミリマクロ(パートナーたち - ジノ。参照)が駆使できません。


 追い立られるように砂丘エリアに移動。

 

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 鳥の巣拾っちゃった。

 

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 カワラサイコ,バラ科

 

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 カワラナデシコ。茨城では山野に普通にありますが,ここの海岸のものは花色が濃い。

 

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 スカシユリ。いよいよ咲き始めました。

 

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 ハイネズ。砂丘を這いまわる針葉樹。粉を吹いた実がきれいです。

 

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 ハナハタザオ。国のレッドデータでⅠA類(危機的絶滅危惧)。確実に見られるのは全国でもここだけ。希少すぎてウイキペディアにも図鑑にも載ってません。

 

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 ここはウスバカゲロウ類の大産地でもあります。参加者のお子さんが見つけた幼虫アリジゴク。

 

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 いろいろ咲いてます。ご紹介した以外では紫色のナミキソウも。

 

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 希少昆虫ハマスズ。保護色です,さあどこにいる? 自然度の高い砂丘にしかいません。そういう場所はそういう人たちには「開発」という名の金儲けの場所でしかなく,海岸特有の昆虫も植物も今,絶滅の危機に瀕してます。

 

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 また追い立てられての移動途中に見てしまった。これがあのネモフィラの丘だあ,こりゃたまげた。秋に備えてコキアの苗が植えられ,手前にはコスモスの種が蒔かれてます。

 

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 もっとたまげた。これがネモフィラの丘の東側,というか裏側。一面のオギが茂る原野。あの有名な写真のウラはこんなだったのね。

 

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 最後が「沢田湧水地」。森の中に清冽な水が湧いて,小さな川が始まります。これはショウブの花。5月の節句のお風呂に入れるのはこれ。希少になりました。

 

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 ビニール越しで申し訳ない,オゼイトトンボ。こんな低地に「尾瀬」の名を持つものが。

 

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 ウラナミアカシジミが死んでました。生息しているんだ。

 

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 駆け足で巡って,ここで解散となりました。入口から遥か離れた場所に放り出される形ですが,私には好都合。じっくり写真が撮れます。森の中を辿ってゆっくり帰ることにします。

 

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 いきなり何だこれ。こんな植物見たことない。私の脳天データベースでこんな実の付け方をするのはコーヒーノキだけだけど,いやまさか。

追記 お騒がせしてすいません。どうやらやたら実の付きのいい「オニシバリ」のようです。れっきとした在来植物。

 

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 雨が多かったので,森の中はキノコだらけ。これはイグチの仲間。

 

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 ウスタケ。

 

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 またこんなのが。キノコが他の菌に寄生された「タケリタケ」かと思いましたが,ツエタケの仲間にも見えるし。キノコには詳しくない分,びっくりだらけで楽しくなってきました。

 

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 ハツタケっぽいの。

 

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 ホコリタケ。熟すると真ん中からぷーっと胞子を吹きます。

 

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 マンネンタケ。こんなものを集めている人もいるそうです。私とは気が合いそうな。

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 地衣類。異星の生物にしか見えない。

 

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 イチヤクソウ(左)とウメガサソウ。その通り,オオウメガサソウの親戚です。

 

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 テリハノイバラの花粉を無心に食べるキリギリスの類の幼虫。こういうのが,なんとも愛しい。

 

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 ネジバナが盛りでした。ハナバチも忙しそうに。

 

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 ただのヒルガオと思って撮った写真ですが,あとから見たらこれ外来のセイヨウヒルガオでは。こんなところまで侵入してたか。

 

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 公園周辺の芝地もいろいろ。クローバーが咲き,ほんのりとハチミツの香りが漂うところもあれば,星を散らしたようにオオニワゼキショウが咲き競う原もあり,一面にブタナが広がる斜面もあり。

 

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 海霧が流れてきました。そろそろ降り始めるでしょう。西口「翼のゲート」。これが翼をモチーフにしているのにはわけがあります。

 


 国営ひたち海浜公園。今はそう呼ばれるここですが,私のような地元の旧世代には「水戸射爆場」の方が通りがいい。ここは戦前の陸軍水戸飛行場,戦後は米軍に接収されて飛行機からの射撃・爆撃の標的が置かれた演習場,それが返還されたのが1973年。公園として造成され,一部開業したのが1991年。ごく最近の話です。まさかこんなポピュラーな場所になろうとは。魅力度47位の茨城県で最も有名な場所の一つですよね。

 

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        ひたちなか市HPより


 もしその勇気をお持ちなら「水戸射爆場」で検索してみてください。女の子が腹を機関砲で打ち抜かれて亡くなった事故,米パイロットが面白半分に住民を追い回し老女を殺害した「ゴードン事件」。怒りを禁じ得ない歴史の数々。我々は沖縄の人たちの反基地行動を他人事のようにニュースで見ていますが,この茨城も同じ苦難を味わっているんです。


 お花の写真をお見せするだけのはずが,またこんな記事になってしまいました。ひたち海浜公園にお越しのさいは,少しだけその自然と歴史にもご注目くださいね。

 

 


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